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QUIPPED

2018年に読んだ本

昨年は飛行機に乗りまくったせいもあり、仕事も一段落したこともあり、45冊読了した。また、Airpods+iPhoneという最強コンボを手に入れたことで、本を聴く、ということも始めてみた。"*"がついている作品は紙で読んだもの、ついていないものは聴いたものだ(ただリンクの方は全て読む方に貼ってある)。

あと、昨年からある程度テーマを決めて本を読もうとしている。

今年も結構本は読めそう・聴けそうであるので、50冊くらい読めたらなと思っている。

  1. * The Years of Lyndon Johnson: Means of Ascent by Robert Caro:去年読み始めたRobert Caroの大作の2冊目。実家で暇をしていた時に一気に読み終わった。そのまま3冊目も行けるかと思ったが、そちらは積ん読状態である。のちに大統領となるLBJが投票操作を駆使して87票差で上院議員選に辛勝したドラマの裏側を描いたのが、この2冊目。人間としては完全に失格なのだが、勝つために手段を選ばない覚悟はすごい。
  2. * スマホを落としただけなのに by 志駕晃:成田空港で買って、太平洋のどこかで読了。異常にソーシャルエンジニアリングが得意な異常なストーカーのミステリー小説。多分これを読んで一番得をするというか、スマホの使い方を気をつけるようになるのは、浮気してるサラリーマンとかなんじゃないかな。
  3. Age of Ambition by Evan Osnos:中国通のアメリカ人ノンフィクション作家が書いた、現代中国の肖像。故あって2018年は中国をテーマに色々読もうと思い、聴いてみた。中国の話は地政学的なカタい話が多いが、これは個人にスポットライトを当てていて、新鮮だった。輸出経済から消費経済の過渡期にある中国人を優しく、鋭く描いている。
  4. Wish Lanterns by Alec Ash:Osnosの本に近いイメージだが、こちらは6人の若い中国人の半生をオムニバス形式で追っているので、よりヒューマニズムを感じる。この手の本が日本の中国通の間でも書かれるようになるといいなと思っている。
  5. Alibaba by Duncan Clark:90年代後半、中国急成長の波に乗り、2014年に世界最大の上場を成し遂げたお化け企業の伝記。元内部の人が書いているだけあって色々と面白い。もちろん孫正義も登場する。「ビジネスプランとビジョンは鉛筆で書け。変わるから。だけど会社の信条はペンで書け。変えてはならないから」と以前誰かに言われたが、それを体現してきたのがAlibabaだと感じた。
  6. The Death of Expertise by Tom Nichols:この2年は我らがDJトランプが究極のアマチュアとして大統領をやっている。アメリカきってのロシア外交のプロである著者が、アマチュアが席巻するご時世に物申した本。アマチュアだから価値がないというわけではないが、それが「プロの意見に意味はない」になるのは危うい、という点では同意。どちらかというと保守主義な著者に(基本的には)自由主義の自分も同感するところが多く、今の政治思想は左右ではなく、上下(エリート対大衆)なのかなと。
  7. On China by Henry Kissinger:中国外交の長老、Kissingerが書いた中国史。彼の中国観は少し古い気もするが、色々と勉強になった部分もある。機会があれば次は聴くのではなく読んでみたい。
  8. The Trial of Henry Kissinger by Christopher Hitchens:先の"On China"をAudibleで聴いたら、次にこれがレコメンドされてきたw著者は生前、反キッシンジャーだったことは知っていたのだが、この本に「なぜ」が書いてあった。まあ端折ってしまえば、アメリカの世界統制のためにKissingerは様々な国の国民たちを犠牲にしてきたという話。とはいえ、じゃあ冷戦真っ只中、に外交と国防のトップとして共産主義圏の拡大を黙ってみてるわけにもいかなかったわけで。国政は難しい。
  9. A Little History of the World by E. H. Gombrich:前から色々な人に勧められていたので、満を持して聴いた。世界の歴史を人類誕生から第二次世界大戦まで一冊に纏めた本。(相当賢い)子供向けに書かれているので、ことばは平易だが、重要なポイントはミスらないで書いている。去年は色々と歴史に関わる本を読んだこともあり、世界史の概形を掴むという意味で役に立った。
  10. Hillbilly Elegy by JD Vance:去年はトランプ支持者層の価値観をもっと知りたいと思い、そっち系の本も積極的に読むようにした。両親は離婚、母親はヤク中の中から最終的にエール大学の法学院を出るところまで辿り着いた著者の自伝。ベストセラーになるだけあって、とても面白かった。まだまだ人種差別そのものは無くならない中で、白人であっても、経済的に恵まれなければ負の連鎖に嵌るアメリカが描かれている。 誰でも這い上がれるというアメリカの良いところが失われてつつあって、それが大衆主義の台頭を促しているのだろう。
  11. *Factory Girls by Leslie Chang:中国の出稼ぎ労働者の女性たちにスポットライトを当てたノンフィクション。自分の夢を叶えるため、家族を豊かにするためには経歴詐称も厭わない彼女たちには逞しさと一種の清々しさを感じる。西洋・日本では現代中国のゴール至上主義を揶揄するものも多いが、一通りベンチャーでがむしゃらにやった自分としては、中国文化の憎めない、むしろ好きなところである。ちなみに著者は、後に紹介するHesslerの妻。
  12. The Origins of Political Order by Francis Fukuyama:新保守主義の父、フクヤマによる政治思想史。学校の勉強で文系を全部すっ飛ばしていたこと、米中関係を紐解く大きなフレームワークを探していたこともあって、聴いてみたのだが、やっぱりこういう学術書に近いやつは紙で読んだ方がいい気がした。どうやって国家が形成され、なぜ国が盛衰するのかを考えるツールがたくさん書いてある。歴史的判例が豊富で、東西多岐にわたるのも良い。
  13. *ゴランノスポン 町田康:短編集。表題作は「ご覧のスポンサーがお送りします」からもじったもの。何も覚えていないということは、あんまりインパクトがなかったのかな。
  14. *The Gatekeepers by Chris Whipple:歴代のChief of Staff(大統領補佐官)のグループ伝記。あまり表に出ない彼等(未だ女性おらず)の仕事がどういうものか分かりやすく書いてある本。個人的に裏方仕事を頑張る補佐役たちを尊敬しているので、究極の裏方であるChief of Staffたちの話は面白かった。なんでChief of Staffがあんなによく変わるのか不思議だったが、その激務具合、そして大統領の政治的身代わり的な役割について知り、腹落ちした。
  15. *Coming Apart by Charles Murray:保守主義の政治学者が、沿岸と中心部・民主党と共和党・エリートと一般人、持てる者と持たざる者といったアメリカ社会の二極化の背景を考察した良書。Murrayは、Bell Curveを書いたことで悪名高いが、この本は実に示唆に富んでいた。人種というパラメータはBell Curveで懲りたのか、この本は白人のみを考察している。
  16. *Amsterdam Stories by Nescio:とある理由でアムステルダムに2週間ほど拘束されていた時に読んだ短編集。あんまり印象に残っていないが、アムステルダムが舞台の話なので、臨場感をもって読んだ。
  17. *The Assault by Harry Mulisch:こちらもアムステルダムで読んだ。ナチス占領下のアムステルダムである夜悲劇が起きる。その犯人が誰なのかを巡り、何十年という時の流れで真実が明かされていく。ドラマを観ているみたいだなあと思ってたら、やっぱり映画化されており、映画の方も有名らしい。
  18. *Why the West Rules For Now by Ian Morris:考古学者が書いた、壮大な規模での地球と人間の歴史。ハードカバーで600ページの大書で、考古学者らしいデータに基づいた観点で、東西国家たちの栄枯盛衰を解き明かす。まあかいつまんでいうと、地理と技術力が歴史の潮流を変えるということなのだが。流行り言葉でいうと「地政学」の本なのかもしれない。著者は大学教授で、筆者も大学一年の時に講義を受けたのだが、寝てばっかりで、成績も芳しくなかった。全くもって勿体ない話だ。
  19. *Strangers in Their Own Land by Arlie Russell Hochschild:カリフォルニア大学バークレー校の大学教授が、トランプ支持層の中核をなすアメリカ中央部の低中産階級の人たちを、人類学的なアプローチでリサーチした本。人類学者なので、かなりの時間を対象者たちと過ごし、鋭い考察を繰り出す。まあ要は、アメリカはニュースで見るほど過激ではなく、多くの人たちは中庸であり、ただあまりにも両岸のエリート層の作ってきた我田引水社会から恩恵を受けられなかったことにより、憤然とし、複雑な思いでトランプ政権に変化のバトンを託しているということ。この視点には、著者も納得する部分がたくさんあり、自分を取り囲むシリコンバレー民の中で感じている違和感を客観的に分析する一助となった。
  20. *The Corrections by Jonathan Franzen:この本がOprah Book Clubに選ばれた際、「嬉しくない」とコメントして色々物議を醸したFranzenだが、文章はやはり上手い。個人的には面白かった。でも流石にアメリカ版「家族ゲーム」にしては長いね。
  21. *Lila by Marilynne Robinson キリスト教すぎてわからなかった小説。もう少しキリスト教そのものの背景があったほうが楽しめる気がする。
  22. *The Puttermesser Papers by Cynthia Ozick:「これは水です」DFWがOzickのことを作家として評価していたーというのをなんか覚えていて、近くの図書館で目に留まった時に買って読んだ。ちょっと不思議なバリキャリ女子の話。確かに文章は面白い。
  23. *Unlikely Partners by Julian Gewirtz:ポスト毛沢東の中国がいかにして「社会主義的資本経済」にたどり着いたのかを、中国外の経済学者たちとの交流に焦点を当て、膨大な文献を読みとき纏めた良著。これまで聞いたことがなかった旧ソビエト圏の経済学者やお馴染み自由主義経済学者Milton Freedmanなどが出てくる。鄧小平時代のキープレイヤーたちの人間模様が細かく書かれていたのが、個人的には勉強になった。ちなみにこれを書いたGewirtz氏、著者より年下で、この本の素地となったのは、学士卒業論文とのこと。若者すげえ。
  24. Six Billion Shoppers by Porter Erisman:なんかこの時Eコマースx新興経済について色々調べてたので聴いた。中国・インド・インドネシア・メキシコといった新興経済におけるEコマース台頭の歴史を、オムニバス形式で書いている。その時は暇つぶし的に聴いたのだが、今年になって新興国での商談が増えてきて、前提共有という意味で役に立っている。多読・乱読だいじ。
  25. *ファイナンス思考 by 朝倉祐介:ソーシャル的な何かで読んだ。確か著者にはどっかで会っているはずであるが、おそらく向こうは覚えていないだろう(し、あんまり著者に会いたいとか思うたちでもない)。当たり前のことが丁寧に書いてある本。ただPL脳とファイナンス脳というカテゴリ化は、二律背反的な印象を作り出すリスクがある。著者も実際商売をやっていた人なのでわかっているだろうが、会社をやってれば長期的なものの見方と、明日のための営業ハックは両方やる羽目になる。むしろそこのコンテクスト切替を上手くできないとあんたの商売死ぬよ、という話として読むべきなんだろう。
  26. *23 Things They Don’t Tell You About Capitalism by Ha-Joon Chan:筆者はどちらかというと自由主義なのだが、だからこそこの本みたいに新ケインジアン(かつちょっとマルクス主義)な一般経済書は頭の体操になる。Chan教授の文章は平易でわかりやすい。
  27. *中国人エリートは日本人をこう見る by 中島 恵:ほとんど何も覚えていないくらい内容が薄かった気がするが、まあ先のHochschild本と一緒で、メディアで人種を判断するのは危ういという点ではいいことが書いてあった。
  28. *Reading Financial Statements:この本は最初の3分の2くらいは、いわゆる「決算書が読めるようになるノート」(とかいうのを誰か書いてた気がする)的な意味での語彙の説明である。でもって後半3分の1くらいは、その前提スキルを駆使して先の「ファイナンス思考」的な企業分析の仕方の触りが書いてある。まあいい本。大学の同期で、25歳でウォール街の投資銀行のデスク最年少VPになった奴が、大昔に勧めてくれたのだが、ずっとKindle的積ん読だったのをやっと消化した。こういう本を若い頃から読んでいたやつはすごい。
  29. China’s Super Consumers by Michael Zakkour and Savio Chan 中国の消費経済の話が色々とされていたが、あんまり印象に残っていない。
  30. *ユートピア by 湊かなえ:確か成田空港で買ったはず。そういや「告白」は映画見たけど原作読んでないなあ。
  31. *生き方 by 稲盛和夫:とある敏腕経営者の方に勧められて買ったのだが、その後積ん読状態でずっと放置してあったのを、意を決して一気に読んだ。もっと前に読んでおけばよかったなあと思うが、ある意味この数年の苦労がなければ、書いてあることに共感できなかったのかもしれない。その経営者の方には年に1・2回は会うのだが、彼の言動にイナモリズムを感じる。数年に一回は読んでいきたい。
  32. Kissinger the Negotiator by James K Sebenius et. al.:その功罪が世論を真っ二つにするKissinger爺さんだが、その交渉力を疑う者はいないだろう。Harvard大学の交渉研究の第一線に立つ教授3人が、Kissingerの冷戦時代の歴史的交渉の裏側にせまった本。とても参考になったのだが、オーディオ本だとパラパラめくれないので、ハードカバーで買おうかと思っている。
  33. Good Strategy Bad Strategy by Richard Rumelt:戦略本の有名どころ。なんかのブログで紹介されていた。実はためになるのはBad Strategyのところで、何故なら我々は軒並み戦略的凡才たちであり、毎日のように悪い戦略を考えついているからだ。悪い戦略を認識できるようになるだけで、だいぶ戦略的ワナから抜け出せるんじゃないかというのが、この本を読んで得た知見である。和訳もされているので、ぜひ。
  34. *Road to Serfdom by F. A. Hayek 知り合いにハイエクの研究者がおり、名前と大まかな主張は知っていたのだが、まとまったものは読んでなかった。"Use of Knowledge in Society"を読んで興味をもち、ロンドンの本屋で買って読んだ。これはマルクスにも言えることだが、ハイエクも彼自身が書いていることと、(おそらく)著書を読んでない人たちが抱いてる印象の間には大きな乖離がある。また少し時間をおいて読みたいし、先のハイエク研究者とも久しぶりに会いたいものである。
  35. Country Driving by Peter Hessler:先のLeslie Changの旦那の本。中国を縦横無尽に車で運転し、行く先々で出会った人たちの生き様を描いた心温まるノンフィクション。
  36. Never Split the Difference by Chris Voss:FBIの交渉専門家による交渉術の本。営業活動をしてそれなりに時間が経つので、筆者も腹落ちするところが多々あった。また聴きたい。
  37. *Why? by Peter Hayes:何故ホロコーストが起きたのか?何故あれほどまでに規模が広がったのか?何故そもそもユダヤ人が被害者で、ドイツ人が加害者だったのか?ホロコーストにまつわる色々な「なぜ」を解き明かそうとした意欲的著書。なかでも著者によるアーレントの"Banality of Evil"に対する反論は興味深かった。
  38. *The Party by Richard McGregor:元Financial Timesの中国特派員による、中国共産党の歴史と仕組みを解説した本。習近平の総書記就任までを描いている。これを読んで初めてCCPが何なのか理解できた気がする。
  39. *A Force So Swift: Mao, Truman, and the Birth of Modern China, 1949 by Kevin Peraino:サンフランシスコ空港で読むものがなくて買ったら、意外と面白かった。1949年という中華人民共和国の誕生の年に焦点を当て、トルーマン政権・蒋介石夫妻・毛沢東の三つ巴のドラマを描いている。マダム蒋介石って英語ペラペラだったのね。しかもゆうに100歳を超えての大往生だったという。
  40. *リーダーシップ by 山内昌之:家に転がっていた本。買った記憶がないから、誰かからもらったのだろうが、稲盛和夫の「生き方」とは打って変わって、読まないで積ん読しとくべきだった本。いろんなリーダーの話が書いてあるのだが、ちょこちょこ現れる執筆当時の与党である民主党政権へのダメ出しとか、プチ自慢が出てきて、あんまり気持ちよく読めた本ではなかった。
  41. *Chaos Monkeys by Antonio Garcia Martínez:物理学博士課程をドロップアウトし、ゴールドマンサックスでクオンツになり、シリコンバレーのデータサイエンスブームにのり、シード投資の騎手Yコンビネーターの投資を受け、ウルトラCの買収劇を演出、会社はツイッターに売れど自分はフェイスブックに着陸、IPOを挟む激動の2年を過ごし、見事クビになった著者の波乱万丈の自伝。まあとにかく面白いから読んでほしい。著者の相当なクズ具合も、ストーリーを際立たせている。
  42. *The Bullet Journal Method by Ryder Carroll:忙しいこともあるのか、電子的にノートを取ると、気も散るし、やることリストも延々と長くなるし、どうしようかなと思っていた時に、Bullet Journal Methodの話を思い出した。ググってみるとなんと本になっている。素晴らしいコンテンツビジネスじゃないかと感銘し、サポーター気分で買って読んでみた。人間面白いもので、自己投資すると行動するものである。この本を読んで以来、Bullet Journal Methodで紙とペンでノートを取るようになった。これが大変良い。まずそんなにたくさん書けないので、何が大事が考えて人の話を聞くようになった。あとミーティングの時に紙とペンだと気が散らないし、絶対にマルチタスクできないので相手にとっても失礼ではない。やることも絞るのできちんとオンタイムに終わるようになるし、何よりプライベートでの物忘れが圧倒的に減った。ハウツー本系はあまり読まないのだが、これは読んで本当によかった一冊。
  43. *穴 by 小山田浩子:最近なぜか積ん読になっている小説が多い。昔ほどフィクションにのめり込まなくなっているのかもしれない。この本も1年以上積ん読されていた一冊。とある週末暇だったので読んでみたら、なかなか面白かった。ちょっと不思議でちょっと不気味な話。
  44. The Life and the Death of Great American Cities by Jane Jacobs:アメリカで都市計画を齧ったことがある人なら誰でも知ってる本。本当にざっくり纏めてしまうと、都市計画における多目的性・多様性・時空間的思考の大事さを、色々な例を引き合いに出して分析している。Jacobsの分析は、都市に関わらず、様々な複雑システムのデザインに当てはまるのかなという印象。けっこう長い本なのだが、何を思ったか、オーディオ本をダウンロードして聴いた。結論からいうと、いい本なのだが、なんせ情報密度が濃いので、ぼーっと聴いていると何回も聞き直す羽目になる。今度また紙で読んでみたい一冊。
  45. *AI Superpowers China, Silicon Valley and the New World Order by Kai-Fu Lee:投資家に知り合いがSNSで喧伝していたので読んだ。最近ぼんやり思っていることとして、非民主制およびそこから派生する統治コストが、AIとデータによって相対的に減少し、逆に一党政治の持つ意思決定のスピードを活かせる中国が、欧州はもちろんのこと、米国を凌駕する未来もあるのかなと。あんまり楽しそうな未来ではないが、妄想系リアリストとしては日頃考えているシナリオである。

2019-02-18

2017年に読んだ本

参考:2016年に読んだ本

ブログ完全休眠、ついに2年連続となってしまった。ハンターハンターを凌駕するアウトプットの無さである。おそらく2018年にはブログを再開できると信じている。読書の方もおろそかになりがちだったが、それなりに纏まった長さの本を読了できたので、一先ず満足である。

  1. "Lolita" by Vladimir Nabokov:読もう読もうと思いつつも10年位読むチャンスがなかったのが、NabokovのLolitaである。ロシア人のNabokovは完璧なトライリンガルで、Lolitaも英語で最初書かれており、英語文学の金字塔とされている。ということで2016年12月にふらっと立ち寄ったニューヨークの本屋で買い、2017年あたまに読み終えたのだが、解説付きバージョンを買って正解だった。英語が難しいのはまあ良いとして、至るところにフランス語が出没、かつ仏語の部分がプロットに関わってきたりするので、これをすらっと読める人は英仏のバイリンガルの知識人に違いない。話そのものは「ふーん」という感じであったが、まあ文章は上手である。
  2. 走ることについて語るときに僕の語ること:村上春樹のノンフィクション。Lolitaが重かったので、さくっと読めるものが欲しくなり手にとった。村上春樹のナルシズムは、彼の文章と同様、さらっと受け入れられるけど、あまり印象に残らない。走るのが好きだということは伝わった。
  3. 本日はお日柄もよく:原田マハの小説。何気に原田マハデビューであった。飯田橋の本屋で買った。コピーライターの話。知り合いで広告関係者も多いので、何となくイメージが掴め面白かった。それなりの数の披露宴には出席しているはずだが、一度も「本日はお日柄もよく」というくだりを聞いたことがなかったので、日本語の勉強にもなった。
  4. 変身:"Lolita"同様、実はDie Verwandlungも読んだことがなかったので読んだ。といってもドイツ語はわからないので、英語で読んだ。ドイツ語ネイティブ曰く、カフカはドイツ語で読んでこそ、その醍醐味がわかるらしい。というのもドイツ語というのは、文末の単語一つで意味が大きく変わるらしく、その文法を巧みに使ったのがカフカだそうだ。当然このトリックは英語では中々再現できない。はて、日本語だとどうだろうか。ちなみに表題作の「変身」よりも、「流刑地にて」の方が個人的には面白かった。閉塞感と空虚感を行間に詰め込ませたら、カフカの右に出るものはいない。
  5. 爪と目:サンフランシスコで急に日本語が読みたくなって買った、藤野可織の芥川賞小説。二人称で書かれたホラーチックな短編。
  6. 風の歌を聴け:村上春樹のデビュー作。なんか「今すぐ本を読み出してかつ読了したい」衝動に駆られて読んだ気がする。荒削りではあるが、すでにハルキズム満載である。良くも悪くも変わらないスタイルが、ノーベル賞を遠ざけているのかもしれない。
  7. Enterprise Architecture As Strategy:仕事で読んだ。マイクロサービスとかそういう話の流れで、知り合いから「この本読むといかに歴史が繰り返すか分かるぜ」的なことを言われ読んだ。90年代のエンプラ基盤プロジェクトのケーススタディが元となっているのだが、25年経った今でも大企業が同じ問題を抱え続けているところが面白い。ITの本質的な問題は技術ではなく組織だと再認識させてくれる良書。
  8. Grand Hotel Abyss:フランクフルト学派そのものの伝記。ベンヤミン、アドルノ、ハバーマスらの半生を、共産主義・ファシズム・冷戦という20世紀の激動の中で描く。体系的にフランクフルト学派について学びたかったので丁度よかった。
  9. Notes from Underground:DFWのエッセーで言及されていたので原作を読んだパターン。が、正直何が言いたいのかわからない本であった。昔からロシア文学とはあまり相性がよくない気がする。
  10. The Iliad:いわゆる「インテリ面して古典を読んでなかった」パターンである。本自体は実は2009年から持っていたのだが、今年ようやく重い腰をあげて読んだ。さすが西洋最古のストーリーというだけあって重厚なストーリーである。これを口承で伝えられるところに人間のロマンを感じる。とにかくいとも簡単に人が死ぬので、元祖バトルロワイヤルである。
  11. The Name of the Rose:初Eco。図書館で借りて読んだので、二重の意味でエコである。哲学とミステリーの塩梅が絶妙。中世ヨーロッパ史は疎いので、勉強になった。
  12. How Will You Measure Your Life?:Audible.comで初めてオーディオブックというものを聴いてみた。イノベーションのジレンマで知られるChristensenと、彼の生徒DilionとAllworthによって書かれた自助本。要約すると「人生の目的関数は『幸せ』であるべきだ」ということ。AllworthはExponentというpodcastのco-hostで、この本の存在もそれを通じて知った。StratecheryのBen ThompsonとJames Allworthがテクノロジー業界をビジネスと戦略目線で分析するExponentは、ビジネス英語を学びたい上級者向けにはオススメである。Thompsonの素朴な中西部英語と、Allworthの典型的なオーストラリア英語の掛け合いが絶妙。
  13. The Birth of a Theorem:フランスの数学者Cédric Villaniの回顧録。フィールズ賞受賞のきっかけにもなった定理を、弟子と共に解明していくプロセスが日記体で書かれている。フィールズ賞の受賞要因となるような定理なので、勿論その証明の内容そのものはわからないのだが、数学者が実際どう働くのかというプロセスのイメージが湧く本である。Villaniは受賞後有名人となり、去年のMacronフィーバーに乗って出馬・当選もしている。TED Talkもしたりと、なかなか多才な人だ。
  14. The Years of Lyndon Johnson: Path to Power:去年のThe Power Brokerで懲りず、またまたCaro本を読み始めた。The Power Brokerが「市政の権力」を紐解いた本ならば、The Years of Lyndon Johnsonは「国政の権力」を紐解いている本だろう。現在進行系なのは、このJohnson大統領伝記シリーズは未完で、今最終巻第5巻を82歳のCaro爺さんが鋭意執筆中だからだ。筆者が今年読んだ"Path to Power"は、第1巻である。The Power Brokerよりは短いが、それでも750ページ近くあった。今読み始めている2巻が400ページ、3巻が1000ページ、4巻が600ページ強あるので、シリーズ読了はおろか、キャッチアップできるのもまだ先だろう。1年後どれほど読めているか楽しみである。

2017-12-31

2016年に読んだ本

参考:2015年に読んだ本

今年は仕事ばっかりで、ついに一本もブログを書かなかった。その分仕事をがんばっていると思いたいが、やっぱりたまには考えていることを日本語で書きたいとは思う。

  1. 言志四録:社長に勧められて読んだ本。日本的なリーダーのあり方について書かれている本だが、1年経った今あまり内容を覚えていないので、また読むべきである。  
  2. データ解析の実務プロセス入門:Excelとawkで知られる(?)データサイエンティストあんちべ氏が書いた、現場に近いデータ分析の話。AIブームの昨今だが、元金融(あんちべ氏も確かそう)のデータ分析屋としては、基本が大事だし、基礎をマスターするのもそう簡単ではない。ツールにこだわったり、流行りに流されてる暇があったら、ひとまずこの本を読んだほうがいい。大阪ガスの河本氏が書いた本と対をなす本。
  3. 10年戦えるデータ分析入門 SQLを武器にデータ活用時代を生き抜く:Cookpadの青木峰郎氏が書いた分析的SQLの本。「会社のデータベースにいろいろデータは入っているらしいが、どうSQLを書いたら欲しい結果が戻ってくるのかわからない」という人向けの良書。エンジニアというよりはデータアナリスト、プランナー向けの本。   
  4. Eternal Curse on the Reader of These Pages:Manuel Puig2冊目。"Betrayed by Rita Hayworth"よりは、わかりやすかった。Puigは話の構成がうまい。
  5. Modern Technical Writing:Palantirで製品ドキュメントを書いている人が書いた、技術的ドキュメント作成の指南書。当然のことながら、この本自体も非常に読みやすいドキュメントとしてまとまっている。タダでKindleで読めるので、技術ドキュメントの書き方で悩んでいる人はぜひ。
  6. How to Write Short:短く。的確に。正しく。がんばれ。Roy Peter Clarkの良書。
  7. Balzac and the Little Chinese Seamstress:文化大革命時代の著者の経験を元に書かれた小説。積ん読消化を兼ねて読んだ。話そのものは、井上靖的な、純文学的な、正しい甘酸っぱさの詰まった、割りとどうでもいい話である。特筆すべきは、文化大革命と共に育った著者が、大学時代にフランスに1984年に留学、18年語の2002年に、この小説をフランス語で書いた、ということだ。伝えたい思いがあれば、母語である必要はないと再認識させられた。
  8. The Kraus Project:20世紀初頭のオーストリアの思想家・風刺作家、Krausのエッセイを、アメリカの作家JonathanFranzenが翻訳し、注釈を加えたもの。この注釈がクソ長い。Franzenは文章がうまいので、ついつい読んでしまうが、注釈の半分くらいは、Krausのエッセイとあまり関係のない、Franzenの自伝的なチラシの裏感満載な散文。Swarthmore大学の独文科からフルブライト奨学金でベルリンに留学している時に、ほとんどドイツ人と満足に話せず、寒い自室でひたすら英語の本を読んでいた、というくだりは、筆者も共感した。Franzen頑固親父にも、青い時代があったんだなと、少し親近感を覚えた。
  9. 数学をいかに教えるか:日本が世界に誇る数学者志村五郎が書いた、数学教育に関する本。東京に行くたびに、帰りの機内用にオアゾの丸善で2−3冊本を買うのだが、その時にはなぜか読まず、1年くらい経ってから読んだ。本題だけなら良書なのだが、ところどころにプチ自慢と、知己・同僚・社会・システムに対する悪口が散りばめられており、後味が悪い。よく言えば、偉大な専門家であることと、人間として尊敬できることは全く別のことである、ということを再認識させてくれる。
  10. Play Bigger:仕事で読んだ「カテゴリデザイン」というマーケティングの話。B2Bハイテク業界で働いている読者が何人いるのかわからないが、その人たちにはおすすめ。
  11. Economic Growth:仕事で読んだ。経済成長の話ではなく、B2B企業の経済的な売上向上のためには、account-based sellingをやりましょうというニッチ本。
  12. The Power Broker:この本を買ったのは少なくとも3−4年前なのだが、1100ページ以上もある本で、いったん250ページくらいまで2013年に読んで、そのまま放置していた。それを2014年の暮れにまた1ページ目から読み始め、夏頃に読み終えた。良くも悪くも今のニューヨークの礎を築いたウルトラ公務員である。Mosesのすごいところは、一度も選挙で勝つこともなく、50年以上に渡ってニューヨーク(市も州も)を裏から牛耳ったことだろう。タイトルどおり、権力というのはどのようにして生まれ、どのように使われ、どのように失われていくのかを、綿密にリサーチされたMosesの人生を通して描いている。作者のRobert Caroは寡作で、50年近いキャリアの間で、この本と、現在も続いているJohnson大統領の伝記の2冊しか本を書いていないのだが、両方ともPulitzer賞を受賞しているという打率10割の伝記作家である。仮に途中で飽きても、漬物石・鈍器・PCモニターの高さ調整具として副次的利用価値があるので、ぜひ。
  13. 築地の記憶 人より魚がエライまち:築地が移転するというんで、何か思い出にと買った築地に関する本。いろいろと築地の内情が書いてある、ホクホクとする本。移転の話にはいろいろと暗雲が立ち込めているが、場所はどうであれ、エコシステムは大事にしていってもらいたい。
  14. 社内プレゼンの資料作成術:元ソフトバンクの前田鎌利氏による。ソフバン流社内スライド作成術。プレゼンの仕方というより、プレゼンの話の流れの組み方、そして実際のスライドの作り方について書いてある。個人的にはプレゼン作りが上手じゃないので、まずは座学と思って買った。今もプレゼンを作る時に必ず読み返す本。  
  15. 社外プレゼンの資料作成術:先の本の社外バージョン。より感情およびコンテクストを伝えるような作りになっている。合わせて買うとよい。これを読むと、孫正義氏のプレゼンの骨子みたいのが垣間見える気がする。
  16. 重力ピエロ:初伊坂幸太郎。弟が降ってくる話。ミステリに昔ほどのめり込めないのはなぜだろうか。
  17. Europe Central:William Vollmannの長編小説。今年読んだ本では"The Power Broker"に次ぐ長さである。"The Power Broker"を読了後、すぐに読み始めたので、なんだかんだ半年読んでいた。20世紀の最初の2/3くらい、Lenin・Hitler・Stalinといったイカれた主人公たちに振り回された、ドイツとロシアの激動の時代を、Shostakovich・Paulus元帥・Kollwitz・Vlasov中将といったサブキャラの視点から書いた歴史小説。Vollmannの本らしく、プロットがあってないようなもので、まあよく調べられた小話がたくさん書いてある。フィクションではあるが、20世紀の独露関係の勉強になった。

2016-12-31

2015年に読んだ本

参考:2014年に読んだ本

今年は仕事ばっかりで、全くブログを書かなかった。なんと、リー・クアン・ユー大往生の一本のみという筆不精ぶりである。2016年もあまりブログを書く時間は無さそうであるが、本は読み続けたい。

  1. Practical Data Science with R:実際データサイエンスをどうやるか実践した本。ZumelとMountは夫婦でやってるシリコンバレーでは名の通ったデータサイエンティストである。RとPythonで論争が巻き起こる業界だが、この夫婦はR派。彼らのブログも結構おもしろくて、たまに読んでいる。
  2. The Wall Street Journal Guide to Information Graphics: The Dos and Don'ts of Presenting Data, Facts, and Figures:WSJでデータ可視化をやってる人が書いた、データ可視化の指南書。基本的なことがきちんとまとめられていて、デフォルトがクソなExcelのグラフとかを直すときに役立つ。短くてサッと読めるのもうれしい。
  3. The Software Paradox:Redmonkという、たった3人のアナリストでやってるIT調査会社があるのだが、そこの創業者のSteve O'Gradyが書いた、ソフトウェア小史。エンプラのソフトウェアが昔高く売れた背景、そして今売れなくなってきてる理由など、56ページの中に、様々な示唆が詰まっている良書。
  4. Crossing the Chasm:B2B(ビジネス向けソフトウェア)のマーケティングについて書いた本。仕事を再考する糧にと再読したら、いろいろと目から鱗だった。Geoffrey Mooreは一発屋かもしれないが、すごいホームランを打ってくれたものである。
  5. 数学で考える経済学:数学は知っているけど経済学は知らない(≒筆者)向けに書かれた、経済学の超入門書。いろいろなトピックのさわりが、それなりに数学を使って書いてある。「ふーん」というレベルだったが、生まれて始めて経済学をおもしろいと思えたので、そういう意味では成功かもしれない。Amazonの他のレビューも書いてあるが、数学の素養がないとキビシイ(そしてそのくせアローの不可能性定理の証明の一般形はスキップしてるので、そういう意味では悪書かもしれない)。
  6. Whores for Gloria:ひたすら性転換した娼婦とセックスしてお話を聞いて、Gloriaについて思いにふけるオッサンの話。あまりに支離滅裂かもしれないが、William Vollmannならでは、でもある。実際この本を書くために、サンフランシスコの娼婦たちと「お話」しまくったらしい。
  7. Python for Data Analysis:Pandasの著者によるPandasの解説本である。仕事でPandasを使う人のキモチを理解する必要に迫られたので、通読した。と同時に数年ぶりにPythonを使うようになった。仕事でプログラムを書くというと、データ分析系の作業ばっかりなので、Pythonの方がRubyより便利である。あと、マーケター的には、中身はPandasの解説なんだけど、タイトルには「データ分析のためのPython」という風に、whatではなくてhowを持ってくるMcKinneyのマーケティング力は素晴らしい。
  8. The Sales Acceleration Formula:マーケティングソフトウェアの大手Hubspotで、長年営業のトップをやってきたRobergeが書いた営業組織の作り方の指南書。営業というと、個人能力が評価されがちだが、強い営業組織を作るには、きちんとしたプロセスを作り、科学的に取り組む必要があることがよくわかる。ブラジルよりもドイツというわけだ。RobergeがHubspotの営業組織をゼロから作り上げたという実績も、彼の解説に説得力をもたせている。
  9. The Hard Thing About Hard Things:今となってはA16Zの共同創業者という肩書きの方が有名なBen Horowitzだが、彼は元々Opswareというデータセンター自動化のソフトウェア会社をHPに16億ドルで売却した起業家である。この本はOpsware時代の苦難苦渋の体験を振り返りつつ、生きるヒントを散りばめた本。なかなかすごい本であった。近く再読したい。
  10. Statistics Done Wrong:学部で物理学の実験の素養として統計学を学んだ筆者が、統計学を学ぶうえで犯しがちなミスを懇切丁寧に書いた良書。みんなデータ駆動でPDCA回そうぜとかいう割には、統計学の知識が完全に欠落している人が殆どなので、この手の本は貴重。統計とか門外漢だから…と思っている人にこそ読んでもらいたい本。ちなみに筆者は統計学で博士課程在学中(執筆当時)。
  11. Crazy Rich Asians:シンガポールの大富豪の跡取り息子が、親友の結婚式への参加をきっかけに、中国系アメリカ人の彼女をシンガポールに連れて行き、家族に会わせる話。こう書くとなんだか単純な話に聞こえるが、あらゆる側面でぶっ飛んでいる小説である。作者のKevin Kwan自身、裕福な家庭に生まれたシンガポール系アメリカ人で、一部自伝的な小説らしい。仕事が忙しくて、毎週末ブランチを食べる30分だけ読んでいたので、読み終わるのに何ヶ月もかかってしまった。日本のドラマになり得る、笑いあり、涙ありの痛快なラブコメティ本。
  12. Behind the Cloud:Salesforce.comの創業者、Marc Benioffの起業指南書。AWSを除けば、世界最速で成長したクラウド事業であるSalesforce.comの創業者のことばには重みがある。特にBenioffが偉いと思うのは、築いた資産をきちんと還元していることだ。ぼく自身、最近Benioffがカリフォルニア大学サンフランシスコ校に寄付した小児病院の目の前に住んでいるのだが、病院を見るたびに、「こういうのをノブリース・オブリージュというんだなあ」と感銘をうける。Salesforce.comには1/1/1という社内ルールがあり、売上の1%を寄付、商品の1%を無償提供、そして社員の時間の1%をボランティアに使うというものだ。ちなみに本書は、そのルールにちなんで、111個のアドバイスに分けられて書いてある。個人的には、Benioffはマーケティングの天才だと再認識した。
  13. 完全独習ベイズ統計学入門:経済学者が書いたベイズ統計の入門書。微積分はおろか、ほぼ算数の範囲だけでベイズ統計の概念を説明しようとした入門書。さすがにベータ関数・正規関数の説明のところは無理があったが、全体的にはわかりやすく書かれている。著者である小島寛之教授は、以前塾で数学講師をされていたのだが、著者もその時の生徒の一人である。さして数学のセンスもない著者に、数学の魅力を著書と授業を通じて教え、数学を専攻させるまでにしてしまった人でもある。昔から、むずかしい話をわかりやすく解説するのは得意な先生だったが、その手腕は衰えていない。
  14. Startup Growth Engines:Growth Hackerの名付け親であり、Dropboxの火付け役であるSean Ellis氏と、Growthhackers.comの発起人のMorgan Brown氏が書いた、ベンチャー成長戦略のケーススタディ集。Dropbox・GitHub・Belly・Square・LinkedInといった企業の話が書かれている。内容はまあ当たり前で、ターゲットを決めて、いい製品を作って、とにかく頑張って売るというもの。ただこの3つを同時にできている会社は殆どいないというのが、ベンチャーの悲哀でもある。
  15. Buyer Personas: How to Gain Insight into your Customer's Expectations, Align your Marketing Strategies, and Win More Business:マーケティングをする上で非常に重要な、想定顧客の作り方について書いた本。仕事でうんうん言っている時に偶然出くわして一気に読んだ。製品マーケティングや商品企画をやっている人には是非おすすめしたい本。

読みかけの本がまたまた何冊かあるので、そこら辺を片付けていきたい。あとやっぱり年間20冊は読まなくてはと思う。

2015-12-30

シンゾー・アベの英語演説、そしてやっぱり偉大なリー・クアンユー

安部首相が4月29日にアメリカ議会でした演説が、話題になっている。すかさず民主党議員が、「日本国の国会議員として、この上なく米国議会に恥ずかしい」とちゃちゃを入れて炎上する一方で、ぼくの周りにいる在米日本人たちは、概ね高評価だ。「日本人として誇りに思う」、らしい。

「日本国の国会議員として」、「日本人として」。

安部首相の演説は、見方によっては恥ずかしいかもしれないし、誇らしいかもしれない。つたない発音で原稿を読み上げただけだという見方もできれば、第二次世界大戦を悔いる声明を、アメリカ上下議員全員の前で、しかも英語で読み上げたというのは、歴史的だという見方もできる(ひょっとしたら朝日新聞と安倍晋三が初めて同意した瞬間かもね)。

いずれの見方にしても、個人的に残念だったのは、安部首相の演説が、アメリカ人がアジア人に期待するステロタイプを超えるものではなかったことだ。

少し穿った見方かもしれないが、このアメリカという地で、アジア人というのは従順な働き者としてみられている。アメリカに自由を求めて移民し、差別にもくじけず頑張り、アクセントを馬鹿にされても笑ってすませ、理不尽なことがあるかもしれないが、数世代を経て、アメリカのイデオロギーを受け入れ、同化していく。安部首相の演説を聞いていると、そのつたないアクセントと、盲目的なアメリカ信奉のことばに、アジア系移民の親たちを重ねてしまう。「馬鹿にされてんだよ、お父さん。わからないの?」

アメリカというのは中二病な国で、崇高な建前と、ドロドロの本音の狭間でもがいている国だ。だが、そんなことはお構いなしに、持ち前の空元気と、唯一無二の軍事力で、光り輝く銀メッキの理想を、世界中に押し付けてきた。戦後の日本は、アメリカ聖戦の恩恵と被害を、十二分に受けた国のひとつだろう。そして、安部首相の演説は、その国のリーダーとして、米国の理想を米国のリーダーに対して反芻するという、想定の範囲内のものだった。

日本人にとっては、この安部首相の演説は、歴史的な瞬間なのかもしれない。ただ、日本人として過ごした時間よりも、アメリカのアジア人として過ごした時間の方が長い筆者にとって、アメリカ議会で話す安部首相は、一人の従順なアジア人にしか映らなかった。失礼を承知で言えば、ありふれた光景過ぎて、感想すらないのである。

こういう演説を見るたびに頭をよぎるのが、今年3月に亡くなったリー・クアンユーだ。英国ケンブリッジ大学で法学を修め、冷戦下の東南アジアで、30代にしてシンガポールという小さな都市国家のリーダーとなったリー・クアンユーは、アメリカ人の偽善と欺瞞を鋭く揶揄できた、数少ないアジア人のリーダーだ。ベトナム戦争中、アメリカの報道番組"Meet the Press"に出演したリーは、彼のベトナム戦争への姿勢を聞き出したいアメリカ人ジャーナリストたちの意地悪い質問を華麗にかわし、舌鋒鋭く反撃した。

安部首相の演説と、リー・クアンユーのインタビューをあえて比較すれば、ぼくがより勇気づけられるのは、後者だというのが本音だ。アメリカで生きるマイノリティとしては、2015年の安倍演説は、過去の残滓でしかなく、1967年のリーのインタビューは、未来への軌跡なのだ。

日本のリー・クアンユーが現れるのは、果たしていつだろうか。

2015-05-02

2014年に読んだ本

参考:2013年に読んだ本

今年はだいぶ仕事が忙しくて、ブログを書く時間も減ったし、本を読む時間もあまりなかった。読みかけの本がたくさんあるので、まずはそこら辺を終わらせるところから2015年はスタート…みたいなことを1年前も言っていた気がする。

  1. 舟を編む:年始に実家で読んだ。これを皮切りに、三浦しをんを数冊読んだ。ほのぼのとした話がほのぼのとした筆致で書かれた作品。
  2. 会社を変える分析の力:大阪ガスのデータサイエンス部隊を率いる河本薫さんの本。ビッグデータだとかそういう話がここ数年流行っているが、多くの企業に一番足りないのは、「データ分析をしたらビジネスがどうよくなるのか、」というイメージを、経営者たちがイマイチ掴めていないこと、また、分析者たちが、経営者たちに自分たちの価値を上手く伝えられていないことだ。そこら辺の話をうまく整理してくれる秀逸な本。
  3. 月魚:やばい、三浦しをんだということ以外、見事に何も覚えていない。
  4. 君はポラリス:三浦しをんの短編集。経験したことはないけれど、妄想したことはあるような話を書かせたら、三浦しをんは天才である。
  5. まほろ市多田便利軒:ドラマにもなった三浦しをんの小説。なんか町田っぽいなあと思って読んでいたら、実際町田市がベースになっているらしい。なかなか面白かった。
  6. The Hologram for the King:いわゆる中年の危機にある、ITコンサルタントのオッサンの話。悲哀に満ち過ぎててあんまり好きになれんかった。Eggersは、テーマ性を重視するがあまり、話がもっさりする傾向がある気がする。
  7. ことばとマーケティング:多角的な手法で、癒しブームを分析した本。一気に読んだんだが、あんまり何も覚えていない。内容はよかった気がする。
  8. Data Smart:Mailchimpのデータサイエンティスト、John Foremanが書いた、データ分析の手法のサーベイ本。敢えてPythonだのRだの使わず、Excelで全ての分析をすることで、道具ではなく、手法を深く理解することを目指した良書。非常におススメである。
  9. The Atlas:ノーベル賞候補としていつも名前があがるアメリカの小説家・ジャーナリスト、William Vollmannの短編集。この人はマジ破天荒で、娼婦を「インタビュー」するために風俗に行きまくったり、児童買春の犠牲者の女の子の命を助けようとして、自らがポン引きに殺されそうになったり、オカマの主人公の小説を書くために、自ら女装してみたりと、よりリアルなストーリーを紡ぎだすためなら、何でもやる鬼才である。
  10. Poor People:そのVollmannが、世界中の貧困者と時間を過ごし、「自分は貧乏だと思うか。だとしたら、なぜ貧乏なのか。」と問いかけたノンフィクション。日本人のホームレスも出てくる。国や地域によって、貧富に対する価値観や、それに対する姿勢の違いがここまであるのかと、当たり前ながら大事なことを再認識させてくれる本。
  11. The Remains of the Day:日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの代表作。Amazonの創業者Jeff Bezosがもっとも大好きな小説だということで、前から読みたいと思っていた。Bezosはこの本を、「たったの10時間、主人公の人生を覗くことで、人生と後悔について教えてくれる本だ」と評していたが(Bezosは後悔最小化フレームワークの提唱者である)、自分の感想は、社畜ライフの最大の悲哀は、社畜であるという自意識の欠乏だということ。今年読んだ小説では、圧倒的に印象に残った。
  12. How Not to Be Wrong:アメリカの数学者Jordan Ellenbergが書いた新書。「間違えない方法」という大分釣りにいっているタイトルではあるが、それに見合うだけの内容である。作家でもあるEllenbergは、文章も上手いし、数学者ならではの、論理的明晰性が随所にみられる。数学的なテーマ(選択バイアス・期待値・対称性など)を、実際にあった挿話と共に紹介する内容で、「数学って一体なんの役に立つの」と思う人、あるいはそう聞かれて困っている人は、是非この本を手にとってもらいたい。
  13. 統計的手法のしくみ:統計学ほど初学者にとってわかりづらい分野も珍しいと思う。この本は、基本的な統計学のコンセプトを、わかりやすく説明してくれる良書。テーマごとに纏まっているので、読みやすい。
  14. Homage to Catalonia:高校の時に読まされた"Animal Farm"、"1984"ぶりのOrwell本。スペイン独立戦争で戦線に立ったOrwellが、彼ならではの精緻な文章で、戦争の現実を描いた良作。20世紀最高のノンフィクションと評されるのもわかる。「カタロニア讃歌」という題名で邦訳されている。
  15. Statistics - A Very Short Introduction:イギリスの統計学者David J. Handのよる統計学のVery Short Introductionシリーズ本。Hand教授の名前は"Classification Technology and the Illusion of Progress"で知っていたので、母校の本屋で見かけた時に買った。統計学の当たり前な話が書いてあるのだが、非常にわかりやすく仕上がっている。
  16. A Supposedly Fun Thing I'll Never Do Again:DFWの有名なエッセイ。3年くらい前に読んだんだが、帰省中の機内で再読した。内容を忘れていたというよりは、おそらく3年前に読んだ時には全く気づいてなかったことが多々あった。カリブ海のクルーズに7日間行っただけで、資本主義の悲哀から、アメリカ人のアイデンティティなど、普遍的なテーマを数百ページにわたって綴れるDFWは、やはり天才である。毎年年末には再読しようと思った。リンク先のエッセイ集には、他の作品も入っている。

こう見ると、ほんとに今年は本を読まなかったな。2015年はもっと読むようにしたいです、はい。

2014-12-31