2021-12-31

2021年に読んだ本

参考:2020年に読んだ本

まさかのコロナ続きで、今年も家で過ごす時間が多かったが、去年よりは外で活動する機会も増えた。ツイッターで知り合い(?)もできて、オンラインは割と充実していたが、2022年は流石にまた国外に行けると良いな。 去年同様、*が付いているのが、読んだ本、それ以外はオーディオブックで聴いた本。特にオススメの本には☆をつけた。

2021年も2020年に引き続き46冊で50冊には届かず。2022年は中国語を本格的に勉強するので、2-3冊は中国語の本も読むのがとりあえずの目標。

  • The Economic Consequences of The Peace by John Maynard Keynes:ケインズのベルサイユ条約批判。Gutenbergで全文タダで読める。「良い戦略・悪い戦略」にも書いてあったが、実現不可能なゴール設定は破滅に向かう好例。
  • The Price of Peace: Money, Democracy, and the Life of John Maynard Keynes by Zachary D. Carter:JMKの伝記。ケインズ経済学の歴史的背景を知るには良かったが、ケインズは2/3くらい読み進めたところで死んで、そっから先は戦後米国経済の話に。この部分が長すぎた。
  • The Affluent Society by JK Galbraith:先のケインズの伝記後半の主人公Galbraithの代表作。「消費を盲信する産業セクターからは大きなイノベーションは生まれない」という主張が、いかにも冷戦期の人。全ては経済格差に始まり、教育に終わるという主張は同意。紙でも読む。
  • Capitalism and Freedom by Milton Friedman:戦後経済学の巨人の代表作的啓蒙書。米国左派リベラルからは批判の的となりがちだけど、政治と経済の自由は連動するという主張は妥当に聞こえた。累進所得税には強く反論しているが、富裕税に対してはなんと言っただろうか。
  • The Indispensable Milton Friedman (edited by Lanny Ebenstein):Reaganomicsの影響もあり、Friedman=保守というイメージが強かったが、classical liberalだなと。彼はKeynesのことを「偉大だが、理論の綻びは歴史が証明した」と評価したが、それは本人にも当てはまる。
  • A Personal Odyssey by Thomas Sowell☆:貧しい南部の家に生まれ、不屈の精神と類まれなる努力で、アメリカを代表する知識人となったSowellの半生を描いている。歯に衣着せぬ物言いは、自分語りでも変わらず。Affirmative Action反対派になった経由も分かって良かった。
  • A Conflict of Visions by Thomas Sowell:先の自伝に続いてSowellの著作2冊目。個人的には非常に面白く聴けた。Constrained v Uncontrainedという二項対立そのものの理論的強靭性には疑問が残るが、保守派と革新派の話が噛み合わないのがなぜか、色々とヒントをもらえる。
  • The People, No by Thomas Frank:Thomasつながりで、初のFrank本。アメリカ大衆主義の歴史を追った本。結論から言うと、いつも悪いのは強欲傲慢のクソエリートで、たまに旗の色が赤くなったり青くなったりするだけと。この手の話は、どうエリートの自浄につなげるかが課題。
  • *ニューカルマ by 新庄耕☆:フォローしてる樋口恭介氏がおすすめしているので読んだ。狭小邸宅に続いて2冊目。サプリの話とか、タイミング的にも納得しながら読んだ。D2C≒デジタル化されたネットワークビジネスな気すらする。読者にカタルシスを与えない構成と文章はさすが。
  • Marxism by Thomas Sowell:去年Marx/Engelsのアンソロジーを読んだ時に感じた、「あれ、マルクス主義から想像していたのと違くないか」に応える本。マルクス主義v.マルクスの整理が進んだ。それにしても人物評の章に描かれるマルクスのモラハラ糞野郎ぶりはヤバい。
  • *Animal Farm by George Orwell:渡辺直美氏のオリンpigの件で、この風刺小説の金字塔が未読であることを思い出した。100ページ足らずに色々と詰め込むOrwellの構成力。人並みに教養を積んだから気づく暗喩。大人になるまでとっておいてよかった。表紙がかわいい版を選んだ。
  • The Triple Package by Amy Chua & Jed Rubenfeld:Coleman HughesのpodcastにAmy Chuaが出てて、その存在を知って聴いた。耳から入ってくると、出典をちゃんとチェックできないので「へーそうなんだ」となってしまうが、証拠不十分感がかなりあった。視点は面白かったけど。
  • *And There Were None by Agatha Christie:実はアガサ・クリスティを読んだことがなかったので、まずは代表作。10年ぶりにKindleで読んでみたが、iPhone画面と比べて快適すぎた。そしてこの程度の推理物でgkbrしてしまうくらいにはチキン野郎。以上ネタバレしない感想。
  • *Klara and The Sun By Kazuo Ishiguro:ノーベル文学賞取って以来…というか10年くらい著作を読んでなかったんだけど、話題になっているのと、周りが高評価だったので読んだ。相変わらず、胸がじわじわと締めつけられる感じに文章を紡ぐの上手。他にも著作読んでみるか…
  • *White Noise by Don DeLillo☆:初DeLillo!出世作らしいが、納得。DFWたち90sアメリカインテリ小説家への影響力を感じる文体とテーマ。久しぶりに小説を読みながら、いやあこれは中々真似できないなあと感心した。もっと早く読んでおけば…と思うと同時に今だから楽しめる説。
  • *Zero K by Don DeLillo:White Noiseが良かったので、図書館でKindle版で借りられる本作を読んだ。文章は上手だけど、小説としてはイマイチ。死生観で迷ったことがないからか、テーマがそもそも面白くなかった。ただ、大金持ちの息子の心理描写はリアルだし、構成は精緻。
  • *Exhalation by Ted Chiang:出世作Arrival…は入っていないChiangの短編集。実は読んだことがなかったが、流石Hugo賞を4回取るだけあるわ。久しぶりにSFっぽいSFを読んでて楽しかった。Story of Your Lifeも読むつもり。
  • Greenlights by Matthew McConaughey:ハリウッドスターの自伝なぞ、持てる(そしてモテる)者のオナニーだろ所詮…という先入観を持って読み始めたが、色々と期待を裏切られた。きちんと自分のvoiceがあり、文章もうまい。本人が全部ナレーションしてるし…とてもオススメ。
  • Powerful by Patty McCord☆:Netflixの人事戦略の築いた著者による回顧録。従業員の勤続って大事なKPIなんだっけ等、色々と人事の常識に疑問をぶつけた良書。自分は「会社はキャリアの乗り物」と信じているので、共感する点が多々あった。でも日本だと労基が大きな壁っぽい。
  • *美しい日本語の辞典 by 小学館辞典編集部:丸善本店の辞書コーナーに一冊だけ残っており、装丁が気に入って買った。結構知らない表現が載っていて、寝る前とかにパラパラ読んでいる。ことばの定義はパッとググれるけど、こういう倒置インデックス的なのは、辞書ならでは。
  • *The End of the End of the Earth by Jonathan Franzen:Franzenのエッセー集。気候変動の記事をなんか読んでたら言及されていたので読んだ。彼の野鳥愛が伝わってくるのと、相変わらず英語は上手。 Franzenさえも昨今の環境左派には食傷気味という点が興味深かった。
  • Wanting: The Power of Mimetic Desire in Everyday Life by Luke Burgis:ジラールの啓蒙書。作者がネット系起業家ということもあり、親近感を持って読めた。後半はふわっとしているが、前半はscapegoat論含む模倣理論を明解に説明している。VCのくだりは笑うしかない。
  • *あのこは貴族 by 山内マリコ☆:映画にもなった、東京と田舎の女性を描いた小説。恵比寿の本屋で一冊だけ平積みで残っていたので買った。山内氏は、映画のような映像を思い浮かべ、それをことばに起こすらしいが、その描写力には感心する。
  • *万年筆バイブル by 伊東道風:万年筆の仕組みから歴史まで事細かに説明した本。丸善本店で別の本を探していたら目に留まった。 アナログ時計とか、万年筆みたいな、機械じかけの日用品好きとしては、興味深く読めたし、勉強になった。作者名は伊東屋スタッフ陣のペンネーム。
  • *時間をもっと大切にするための小さいノート活用術 by 高橋拓也:先の「万年筆バイブル」は、こちらの本を探している時に見つけた。ふとしたきっかけでDialog Notebookを見つけ、その流れで「まいにち、文房具」の存在を知り、そこからたどり着いた。手書きノート初心者向け。
  • *職業としての小説家 by 村上春樹:ずっと気になっていたのだが、丸善本店でふと目を落とした時に視界に入ったので買った(探していたのは、みうらじゅんとリリー・フランキーの本w) 村上春樹氏は芸術家というより、職人なんだなと。そして、職人の方が、アートを産むのよね…
  • *向田邦子ベストエッセイ by 向田和子編:今年は向田邦子没後40年ということで、どこの書店も特集を組んでいる。どのエッセイを読んでも、彼女の粋な生き様が溢れ出てくる。特に最後の「手袋のさがす」は、「ふつう」の息苦しさを感じている人に、ぜひお勧めしたい。
  • Against All Enemies by Richard Clarke:アフガニスタン撤退の報を受けて、そう言えばこれ読んでなかったと思い、手にとった。Clarkeのアルカイダ分析を読むと、いつの時代も国策は、国益よりも、国内政治的な動機に動かされるんだなと感じる。コロナ政策もそうだしね。
  • *ぼくはこんな本を読んできた by 立花隆:“真の過去の知の総体は、常に最新のレポートの中にしかない” “それに僕は、「この一冊」という読み方はするべきじゃないと思っててね。何かに興味を持ったら、関連の本は十冊は読むべきなんです”
  • *男どき女どき by 向田邦子:向田邦子氏が語る男女の話、というか女からみた男の話。フィクションもエッセイも収められている。「目は心の窓といいます」「老いに席をゆずろうとしない」といった表現に、稀代のヒットメーカーのセンスを感じる。
  • Between You & Me: Confessions of a Comma Queen by Mary Norris:TNYにコピーエディターとして何十年も務めているNorris氏の自伝…のフリをした痛快な英文法の与太話エッセイ集。自伝でBryan Garnerの名前が出てくるのはさすがTNY関係者。一番ツボったのは筆記具の話かなw
  • The Psychology of Money by Morgan Housel:兵長が読んで良かったと言ってのでオーディオブックで聴いた。お金との付き合い方を考えるためのガイドブック。特に新しい発見はなかったけれど、この手の話は定期的にインプットした方が、心の筋トレ的な意味で良い。
  • *Kissa by Kissa by Craig Mod:中山道と伊勢路を歩き、道中出会った喫茶店とその人間模様について書いたフォトエッセイ。鎌倉からスタートして京都までその距離963キロ、立ち寄った喫茶店29店。 一般には流通していないので、ご本人のウェブサイトから直接お求めあれ。
  • *いま生きる「資本論」 by 佐藤優:サラリーマンはマルクスを読むと不幸が減る、というのが僕の持論なのだが、この本はマルクスの代表作「資本論」の啓蒙書。 竹中半蔵氏は資本論を理解しているから労働を搾取するパソナの会長をやっているんだというくだりは、さすが佐藤優w
  • *思い出トランプ by 向田邦子:直木賞受賞作3篇を含む短編13篇(よってトランプ)。エッセイは色々と今年読んでいて、創作はなんぼのもんじゃろって感じだったが、創作の方がすごかった。あとがきで水上勉氏が、短編を学びたい人は収録作を写してみると良い、というのも頷ける。
  • *新聞記者、本屋になる by @ochimira:記者を58歳で辞めた筆者が本屋を始めた経緯を書いた本。本だけでは売上は立たないこと、本を売るので忙しい本屋は読書好きには向かないこと、長居して何も買わず店構えを撮ろうとした客にキレそうになった話など、SMBのリアルを感じる。
  • *カラフル by 森絵都:近所の本屋で「高校生の間で話題!」と宣伝されており、流行りに乗りたいオッサンは買わされてしまった。今流行ってる割には時代描写がすごい自分の年代とマッチしているなと感じ、出版年を調べたら98年だった笑 SNSが荒む今、この話が流行るのも納得。
  • *Freedom by Jonathan Franzen☆:出世作はNational Book Award受賞のThe Correctionsだが、こちらの方が秀作。2004年&2010年という時代設定も個人的にはドンピシャだった。今のFranzenの年齢くらいになったら懐古的にもう一度読み直したい。フィクションでは今年No. 1作品。
  • *共同幻想論 by 吉本隆明:高校生の時に読んだ記憶があるが、今読み返すと、あの頃さして理解できていたは思えない。今回はそれなりに理解できた気がするが、そもそも吉本隆明って文章が周りくどいし、反論の仕方が子供じみていると率直に思えるほどには歳をとった。再読候補。
  • *財布のつぶやき by 群ようこ:近所のオシャレ蔦屋書店の「食と生活」コーナーにあった。初群ようこ。イメージ的には佐野洋子/向田邦子の後継者かな。独身で猫を飼うというのは日本の女性エッセイストの一つの型なのだろうか。 文体的には佐野/向田の方が好き。
  • *文章読本 by 丸谷才一:旧仮名遣いを敬遠して読んでなかった作家だが、いったん読み始めてしまうと割とすぐに慣れた。本の内容そのものは、割とその手の本にありがちな話だが、日本語特有の文章の書き方についての考察に関しては、讀みごたへがあつたやうに思ふ。
  • *春宵十話 by 岡潔:何気に読んだことがなかったので丸善で平積みになっていたものを購入。若干懐古主義(と言っても彼が憂いている時代すら今や懐古される時代なのだが)を感じるが、スパッと言い切る物いいは心地よい。岡潔はツイッターに向いていたと思う。
  • *遠野物語 by 柳田國男:共同幻想論からの流れで二十年ぶりに読んだのだが、意外に面白かった。ここでいう面白いというのは、カフカ的な意味不明な面白さ。 後半2/3の拾遺の部分は初読だったのだが、こちらの方が面白い。最初に生えた陰毛を抜くとボーボーに生えるらしいよ。
  • *樹影譚 by 丸谷才一☆:BRUTUS村上春樹特集で、彼の選ぶ51冊にランクインしていた表題作+他2作。村上氏は丸谷氏を日本語のスタイリストと評したが、言い得て妙である。話そのものは至極くだらないのだが、独特の文体と構成力で面白く読める。メタな意味で村上春樹に似ている。
  • *山の人生 by 柳田國男:遠野物語を買った時に一緒に買った。連載をまとめた作品なので、遠野物語よりは読みやすく書かれている(仮名遣い含め)。こういう話を読むと、鬼滅の刃的なものが日本人の心の響くのも頷ける。鬼の子の話とかそっくりそのまま出てくるし。再読候補。
  • *The Man Who Loved Children by Christina Stead:Franzenが勧めまくったことで再発見された作家/作品。前々から読もうと思っていてやっと読めた。いわゆる翻訳不可能な作品にして、強烈なフェミニスト文学。淡々と悲喜劇的クソ家族を描く。あと出てくる男がことごとくクソ。
  • *歴史を考えるヒント by 網野善彦:FFの方に勧められた網野史の入り口ということで読んだ。素人理解だと、本流の歴史学ではないそうだが、読み物としては楽しく読めた。他の作品も読んでみたいし、逆に反網野(メインストリーム?)でおすすめの日本史学者がいればぜひ知りたい。
  • *ここは退屈迎えに来て by 山内マリコ:日本人女性の多くが当たり前に経験しているが日本人男性が到底知り得ないことを、真摯かつ丁寧に、でも何処かポップに描かせたら山内マリコは当代ピカイチだと思う。 「チンコ使わないセックスってないの?」
  • *しない。 by 群ようこ:限界アラサー独身という共同幻想にモヤる人にこそ読んでもらいたいエッセー集。名前こそ群だけど、全く群れないようこさんの話。我が道を行く清々しさには勇気づけられる。文庫版のあとがきにしれっとオチが書いてあるのでそこまで読んでほしい。
  • The Consolations of Philosophy by Alain de Botton:今年最後はde Botton。哲学ダイジェストを文学タッチで、という感じ。出てくる哲学者は聞いたことあるけど読んだことない方々ばかりだったので、2022年はいくつか読もうと思う。とりあえずショーペンハウワーは非モテ。
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