2020-01-01

2019年に読んだ本

参考:2018年に読んだ本

相変わらず年の6分の1を飛行機の中(出張先ではない)で過ごすという生活を続け、43冊読了した。 飛行機の中だとオーディオブックは聞き辛いので、紙の本の割合が増えた気もする。去年同様、*が付いているのが、 読んだ本、それ以外はオーディオブックで聴いた本。特にオススメの本には☆をつけた。

2020年こそ50冊は読みたい。

  • How to American by Jimmy O. Yang シリコンバレーを皮肉ったドラマ「Silicon Valley」で中国人起業家を演じて一挙有名になったJimmu O. Yangの自伝。本人がナレーションを担当している。アジア系移民の共感を呼ぶ話。
  • *プライベートバンカー by 清武英利 節税と資産運用の為にシンガポールに逃げる日本人富裕層の話を描いたノンフィクション(あるいはフィクション的ルポタージュ)。清武さんと言えば、クソナベツネに刃向かって失脚した人でもあるが、その後こんな本を書いていた。
  • *Great Delusion by John Mearsheimer 攻撃的現実主義の旗手、Mearsheimerによる最近の地政学の本。作者も大人になったのか、リアリズムに共感を覚えるようになった。
  • *現代の地政学 by 佐藤優 この辺りで色々と地政学の本を読んでいた気がする。地理というのはなかなか普遍性のあるものなので、ちょっと頭に入れておくと便利である。
  • *現代日本の地政学 13のリスクと地経学の時代 by 日本再建イニシアティブ こちらは先の佐藤優がボコボコに酷評する船橋洋一一派。こういうインテリの殴り合いは、傍観者たちに気づきを与えてくれるので、ありがたい。もっとやれ。
  • *江副浩正 by 馬場マコト & 土屋洋☆ 最近読んだ伝記物ではトップ3に入るであろう、リクルート創業者の話。一通り商売の立ち上げに関わったこともあってか、改めて江副さんの凄さを感じた。
  • Midnight in Peking by Paul French 1937年に北京で実際にあった英国人女性殺害事件をモチーフにした小説。たまにこういうTrue Crimeものが読みたくなる。悪くはなかったが、年間True Crimeベストは43冊目だなあ。
  • *Attention Merchants by Tim Wu 人の注意をひいて換金するというのが広告商売の核であるが、その短くも濃い歴史を一通り辿り、いわゆるFacebookとGoogleの、濡れ手に粟、商売モラルはどこに行った問題で締めた本。Tim Wuは師匠のLessigよりもアカデミックな書き方をする。
  • *Conspiracy by Ryan Holiday Peter Thielが、Hulk Hoganのセックスビデオを火種に、あらゆる司法手段を張り巡らせた煉獄の裁判劇を繰り広げ、Gawkerに復讐する話。自分がゲイであるということをすっぱ抜かれたということではなく、有る事無い事を書くメディアは消えるべきだという信念の元、ってこと。一日に2000万とか使ってたりしていて、Thielのトチ狂い感が伝わってくる。
  • *君主論 by Niccolo Machiavelli 訳 池田廉 意外や意外、ちゃんと読んだことがなかった。マキャベリズムというと、サイコパス的でネガティブな印象を受けるが、原著をちゃんと読むと、冷静な現実主義に基づいた示唆に富んでいるように見えた。
  • *The Tragedy of Great Power Politics by John Mearsheimer Mearsheimerのメインの単作。先のGreat Delusionのベースにもなっている。2000年初頭の段階で中国の脅威を唱えており、リアリズムの強みが感じられる良書。
  • *The Curse of Bigness by Tim Wu アメリカの独禁法小史。まあ法的インフラが時代遅れだよね、って話。
  • *中国経済講義 by 梶谷懐 中国史を経済的な観点で書いた本だったはずだが、印象が薄い。
  • *現代語訳 論語と算盤 by 渋沢栄一 訳・守屋淳 経営者みんな大好き論語と算盤。現代語訳で読みやすかった。5、6年前の自分なら、古めかしい原著を味わって…とか粋がっていたのだろうが、簡単に読めるに越したことはない。また読み返したいと思い、本棚キープ。
  • *モナドの領域 by 筒井康隆 断筆するする詐欺の筒井康隆の「最後の作品」。昔はこういうSF小説に夢中になったのだが、今回はイマイチ入り込めなかった。
  • *しないことリスト by Pha 意識のインフレの抑止剤ともいえる本。僕はどちらかというと意識が低いので、単に同調することが多かったが、気疲れしている人にオススメ。
  • *Meditations by Marcus Aurelius 「これ読むと怒らなくなる」と勧められた本。「論語と算盤」と同じく、人生の節目に読み直すべきと感じた本。さすが2000年近く残るだけのことはある、味わい深い文章。
  • *Working by Robert Caro クッソ長いジョンソン大統領の伝記を書き続けるCaroの自伝的何か。ピュリッツァー賞打率10割の作家でも自信を無くすこともあるというのが、勇気付けられる。あとやはり、愚直にコツコツと仕事をするって大事。
  • The Making of a Manager by Julie Zhuo Facebookの初期社員で、製品デザインのVPまで登り詰めた人のマネジメント指南書。シリコンバレーのベンチャーで一山当てた大金持ちの戯言と思いきや、タメになる話がたくさん書いてあった。
  • *Logic Magazine Issue 7 中国 サンフランシスコのヒップスター雑誌の中国特集。面白い記事が粒揃いだった。
  • *蚂蚁金服 by 廉薇 边慧 苏向辉 曹鹏程 (永井麻生子訳) アリババ集団が展開するAlipayについて調べているうちに辿りついた。変化の速い中国でも、やはり金融インフラは時間がかかるのね。
  • *On Grand Strategy by John Gaddis 空港で買った。「戦略=ゴール策定+そこまでの実現可能な段取り」という話がたくさん書いてある本。
  • *Breakfast at Tiffany's by Truman Capote 14年ぶりに、「あれってどんな話だったっけ」と思って読んだ。大人になった今、ホリーの魅力(とウザさ)がよくわかる。
  • *Fahrenheit 451 by Ray Bradbury 家にあったので読んだ。名著…なんだろうけど、やっぱり最近SFには入り込めないなあ。
  • *Symmetry: A Very Short Introduction by Ian Stewart 対称性について書いてある本。なぜか急に対称性について読みたくなって買った。ようやっとLeech格子が何たるかを理解できたので良かった。
  • *Ship of Fools by Tucker Carlson アメリカはFoxニュースでおなじみTuckerの本。僕自身、極右でもなんでもないが、テレビで聴いている無茶苦茶に聞こえるCarlsonの意見も、文章に落としてみると、一理あるところも意外とある。右と左の乖離が、今米国が抱える一番深い問題であり、そういう意味でも、右派の意見をゼロベースで聴く姿勢は大切にしたい。
  • *ランニングする前に読む本 by 田中宏暁 ランニングを本格的に始めたこともあり、何冊かの本で座学した。その内の一冊。走る時に体で何が起きているか、科学的に書いてあって、色々と整理された。
  • Confronting the Classics by Mary Beard 古代ローマ・ギリシャの第一線の研究者の講義録。ランニング中に聴いていたので、細かい話は筒抜けていったが、古代について色々と判明したのは、発掘や発掘物の検証に必要な技術・科学が発達したこの数世紀である、というのが最大の学び。未来にならないと、昔のことがわからない、というところに一種のロマンを感じる。
  • Digital Minimalism by Cal Newport 持ち物減らせ、ソーシャルやり過ぎるな的な話。実際このあとiPadをあんまり使ってないなと思い、オカンにあげた。
  • *The Adventures of Augie March 10年近く積読していたノーベル賞作家の小説を遂に読んだ。まあよく書かれているけどクソ長い。主人公のダメンズぶりが物哀しい。
  • *マンガでわかる新しいランニング入門 by 中野ジェームス修一 ランニングのマンガw
  • *Reality is not what it seems by Carlo Rovelli☆ イタリアの物理学者による、現代物理の啓蒙書。今までに読んだどの物理の本よりも良かった。物理学的発見のコンテキストがしっかりと書かれているからかもしれない。
  • The Third Revolution by Elizabeth Economy 現代中国研究者が書いた現代中国研究の本。「アメリカ人はinventionは得意だが、それを商売に換えるinventionは我々の方が得意だ」という視点が個人的には刺さった。コピー商売ではなくて、イノベーションだと。
  • Bad Blood by John Carreyrou☆ シリコンバレー稀代の詐欺ベンチャーテラノスの一部始終を描いた良著。シリコンバレーを盲信している人にこそ読んでもらいたい。イノベーションと詐欺は紙一重(になり得る)という警鐘。
  • *誰がアパレルを殺すのか by 杉原淳一 仕事でアパレル業界の絡みが増えてきたので読んだ。
  • *2030年アパレルの未来 by 福田稔 同上。
  • *風が強く吹いている by 三浦しをん ☆ 自分がランニングをするようになったからか、とても楽しく読めた。三浦しをんは、テーマといい、プロットといい、ドラマ化しやすい作家ナンバーワンじゃなかろうか。
  • *この世を生き切る醍醐味 by 樹木希林 2019年に死んだ樹木希林のインタビュー集。こういう生き方・死に方ができるといいなと思った。
  • *マラソンは毎日走っても完走できない by 小出義雄 これまた2019年に亡くなった小出監督のマラソン教本。
  • *The Visual Display of Quantitative Information by Edward Tufte ☆ 5年くらい積読していたが、とある日曜にふと読んだ。Tufteの文章はウィットに富んでいて面白い。彼の本が全部自費出版だということも初めて知った。今でこそ引っ張りだこだが、最初は出版社がどこもつかなかったそうだ。
  • *The Savage Detectives by Roberto Bolano 前からずっと気になっていたBolanoの、短い方の長編小説。テーマそのものはあんまりピンとこなかったが、文章の構成には唸らされた。長い方の長編小説「2666」の方も、機会を見つけて読みたい。
  • *30km過ぎで一番速く走るマラソン by 小出義雄 実際マラソンを走ったら、30キロ近くで死にそうになったので、この本を読んで日々の練習に活かしたい。
  • *In Cold Blood by Truman Capote☆ 今年最大のヒットと言っていいくらい面白かった。邦題「冷血」と言えばピンと来る人もいるかもしれない。Capoteはなんと言っても文章が上手い。それもあらゆる粒度で上手い。全体の構成しかり、段落の筆運び然り、言い回し然り。いい本で一年を締めくくることができた。
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