2021-06-26

万年筆を買った

自分の誕生祝いに万年筆を買った。このデジタル全盛期に、アナログ製品に2万円も溶かしてしまった。

この一年ほど、手書きでノートをとることが増えた。去年の誕生日にプレゼントでもらった万年筆を使う、格好の口実だからだ。ただしその万年筆はおしゃれだが長時間利用には向いてないので、手が疲れない執筆用にと今回購入したのが、PILOT社のカスタムヘリテージ912というわけだ。

手書きでノートをとるようになってから、Zoomで人の話を聴いている時に、より集中できるようになった。目線の先にあるのは、紙とペン先だけ。それ以外、注意をひくものは、何もない。

加えて、人の話の聴き方が、立体的になった。窮屈なほどに線形であるパソコンやスマホのメモアプリだと、何分も前に発言されたことと、今話されていることのつながりが見えた時、その関係性を表現することが難しい。その点、文字どおり縦横無尽に使えるメモ用紙は、とても便利だ。話者の言葉を「書く」ことも、論点の再構成を「描く」ことも、さらっとできる。そして、その副次的効果として、会話中に、より意義のある質問ができる。意義のある質問は、対話を豊かにする。そして豊かな対話は、共に過ごす時間を豊かにする。

タブレットでもまるで紙のようにノートが取れるアプリはあるに違いない。ただ、紙とペンほど起動時間もレイテンシも小さいアプリは、まだタブレットでは実現できていないように思う。

当然のことながら、デジタルの方が、保存性・検索性は高い。が、少なくとも自分の場合、紙とペンによって高められる話者の言葉への集中力は、後日紙からデジタル媒体にメモした内容を移植するコストを鑑みても、十二分に値する。

他の人と過ごす時間の密度にこだわり始めたら、いよいよ人生も後半戦なのかもしれないが。

Creative Commons License