2020-12-31
2020年に読んだ本
参考:2019年に読んだ本
去年までとは違い、起きている時間のほとんどを家で過ごした。いわゆる二酸化炭素排出力は激減したに違いない。 去年同様、*が付いているのが、読んだ本、それ以外はオーディオブックで聴いた本。特にオススメの本には☆をつけた。
「2020年こそ50冊は読みたい」と書いたが、惜しくも46冊で終わってしまった。が、途中でCourseraで政治哲学のクラスを取れたりと、読書の幅は広がった。これは2021年にもつなげたい。
- *あなたに伝えたい政治の話 by 三浦瑠麗:ジャパネットで右翼扱いされるので、実際どんな思想の人かと思って読んだ。意外と普通、というかリベラルだという感想。外交に関してはとてもリアリストで、主流保守もそうだから、右翼扱いされるのだろうか。個人的には好きな論客。
- *物語 シンガポールの歴史 by 岩崎育夫:旅行で行ったシンガポールについてもう少し知りたくなり読んだ。LKYという最強のリーダーの系譜でもある。SWOT分析でいうWとTがたくさんあったのに先進国を半世紀で作ったというのはすごい。
- *しょぼい喫茶店の本 by 池田達也:Kindleにおすすめされて読んだ。リアルな収入とかやりくりの話も書いてあって意外と(と言ったら失礼か)参考になった。最後はほっこりハッピーエンドの良書。
- *プラナカン 東南アジアを動かす謎の民 by 太田泰彦:シンガポールだけじゃなくてマレーシアにも行ったのだが、マレーシアでも華僑の文化を強く感じ、ちょっとプラナカンに関して読んだ。中国が何世紀という長いスパンで物事に取り組む姿勢は、昔からなんだなという感想。
- *Born to Run by Christopher McDougall:中米のウルトラランナーがたくさんいる民族の話。積読だったのだが、自分がマラソンで膝を痛めたこともあり、筆者が足を痛めるところから始まる本書に共感を覚えて読んだ。すごい実用的なアドバイスとしては、踵で着地しないこと。
- *Monkeyluv by Robert M. Sapolsky:生物学者Sapolskyの科学エッセイ集。僕は科学の類が苦手(というか読んでもあんまり頭に入ってこない)のだが、Sapolsky教授は文章が上手いので読みやすい。ただ、ちょうど3月頭コロナが始まりだした欧州で読んでたこともあり、印象薄め。
- *La Place de la Concorde by John McPhee:ノンフィクション作家John McPheeがスイス軍に同行した時の話。スイスは仕事で思いがけず深く関わることになった国で、地名なども親近感を覚えた。個人的なハイライトは、スイス軍の演習で誤爆してしまった牛の補償の話。牛可哀想。
- *Measure What Matters by John Doerr:仕事で読まされたOKRの本。OKRってスクワットとか腕立て伏せみたいなもので、みんな知ってるし、なんとなくやり方はわかるんだけど、きちんと実行できる人は少ない印象を受ける。そういう意味では良かった。
- *The Pine Barrens by John McPhee:McPhee2冊目。題名のPine BarrensはNYのお隣NJにある広大な森で、そこで生活する人たちと生態系について書いた本。自然と人の関わりを書かせたらMcPheeはすごい。コロナが無ければ行きたかった場所のひとつ。
- *Identity by Francis Fukuyama:フランシス・フクヤマの最新作。トランプ政権4年の(結果的)最終年に読む本としてはタイミングが良かった。内容のまとめとしては@RiceDavit氏の書評が秀逸なのでぜひ。
- *The Elements of Typograhic Style by Robert Bringhurst:フォント業界の聖書。確か昔chibicodeの薦めで買った。ということは10年近く積読していたことになる。自分はデザイナーでもなんでもないが、新書的な感じで楽しめた。本の装丁をする人へのリスペクトが爆上がる。
- *The Visual Display of Quantitative Information by Edward Tufte:フォントの次はデータ可視化の聖書。今年はいわゆるバイブル本を何冊か読んだな。内容も良いが、Tufteの皮肉っぽいユーモアが良い。最初は出版社が見つからず、自費出版だったというから驚く。
- *Grundrisse by Karl Marx:この頃はコロナでマジ暇だったので、マルクスをつらつら読んでいた。特に良かったのはグルンドリッセ、ということで紹介。Gig economyの話とか、マルクス的観点で読み解くと非常に納得感がある。階級闘争は、資本がある限り続くよね。果てしなく。
- *君に友だちはいらない by 瀧本哲史☆:作者曰く、一番売れなかったけど、一番気に入っている本らしい。売れなかったのは、タイトルがネガティブ過ぎるからじゃなかろうか(武器も友だちも欲しいよね)。内容は瀧本イズム満載で、資本に搾取されない生き方のサバイバルガイド。
- *Who Gets What And Why? by Alvin Roth:ノーベル経済学賞受賞のRoth教授によるマッチング理論の啓蒙書。(離散)数学好きとしては面白く読めた。現実社会に起因する前提条件に対して解を出すことが、理論の世界でも評価されるあたりが、経済学と数学との違いだと感じた。
- *Why Nations Fail by Daron Acemoglu & James A. Robinson:著名な政治経済学者コンビの話題書。タイトルの答えから言うと、資産権をはじめとする民主的システムが立ち上がらないから。しかし長い。それもスマホで読むとさらに長い。2周目は紙で、と思った本でした。
- Taxing the Rich by Kenneth Scheve & David Stasavage:確か@RiceDavitブログで存在を知った本。Audiobookで聴いたのが敗因だった。計量経済学的な話も多く、グラフとかを頭で想像して聴く必要があった。こちらがライス氏の書評。
- *The Nature of Economies by Jane Jacobs:戦後都市計画批判の旗手であったJacobsの経済批評の短編。とある老教授の家に生徒が集まって話すという、ギリシャ哲学的フォーマット。経済学的にどうなのかはわからないが、経済活動を俯瞰する本としては良かった。
- *Griftopia by Matt Taibbi:Audiobookのクレジットも貯まってるし、もうなんでも読んでやれということでTaibbiも聴くことに。これが面白い、ということでこの後しばらくTaibbi本が続くことに。この本を読むと如何に民主党も共和党も同じ穴の狢かわかる。
- *The Divide by Matt Taibbi:Griftopiaが如何に金持ちが強欲かという話なら、こちらは如何に貧乏人が経済的だけでなく、社会的に損をするかという話。人種と経済は密相関しているとは言え、人種にばかり目を向けると、貧乏人が人種を巡って抗争し、金持ちが得しますよ、と。
- Hate Inc. by Matt Taibbi☆:今年読んだ中でベスト。如何にマスメディアがアメリカの世論を真っ二つにするのに一役も二役も買ったか、という話。そして、この本そのものが、その後Rolling Stone誌を辞めるTaibbiの個人Substackを書籍化したもの、というところに時代を感じる。
- *ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた:@nina_ehara 氏のブログで紹介されていたものを読んだ。移民政策が現実的ではない日本に於いて、女性の働き方改革は経済的死活問題だよね。学生が色々と素朴な疑問をぶつけるという形式も、受け入れやすそう。
- *On Love by Alain De Botton:既にブログで紹介した。蔵書を整理してたらもう一冊De Bottonの本が出てきたので、来年読もうかな。
- I Can’t Breath by Matt Taibbi:BLM的な話の流れで読んだEric Garnerの話。人種差別もそうだけど、貧困に起因する経済差別の側面も強く描かれている。本当にBLMに取り組むなら、都市計画・教育・税制全て見直さないと無理だと思うし、市場経済だけでは解決はできんよな。
- *コサインなんて人生に関係ないと思った人のための数学のはなし by タテノカズヒロ:家族か誰かが、僕が数学好きということで買ってくれた本だが、内容が所々でchauvinisticで、あんまり気分良く読めた本ではなかった。ので、リンクは貼りません。
- Insane Clown President by Matt Taibbi:Taibbiの著作は全部読んだことになる。とにかく読みやすいのよね。これは2016年の大統領選の取材録。如何にメディアがトランプを見縊っていたか分かる話。ここから4年後にHate Inc.が書かれる。トランプは本当にNYTを救ったと思う。
- *僕は君の「熱」に投資しよう by 佐俣アンリ:シードファンドANRIの伝記的な本。起業家にニコニコしながら米を買い与える感動秘話。@anrit氏の文章にはpg的な何かを感じる。おはようビル1階の珈琲は美味しいよ。
- The Color of Law by Richard Rothstein:アメリカが、如何に不動産と居住制限を通して間接的人種差別を続けてきたか、という話。ランニングしている時によく聴いていたのだが、腹立たしい話が多かった。いつの時代もクソなのは金持ちの資本主義者ということがよく分かる。
- *Pastoralia by George Saunders:積読解消で読み始めたら面白かった。昔はSaundersの良さがイマイチわからなかったのだが、今回は違った。おっさんの哀愁、みたいな者が自分も分かるだけおっさんになったってことかもしれない。不思議な世界観はヴォネガットに通ずる。
- *直感力 by 羽生善治:こちらも積読解消。やっぱりなんでも頂点に立つ人の話は面白い。人生の全てを将棋に役立てようとしているストイックさには学びが多かった。
- *In Persuasion Nation by George Saunders:Saunders2冊目。SeaportのMcNally Jacksonで買った。コロナでああいう独立系の本屋は一層経営が厳しくなった。春先には、リストラされた社員のために2000ドル寄付をし、初夏に再開してからはよく行っていた。生き延びて欲しい。
- Evicted by Matthew Desmond:Audibleクレジットで聴いた。綿密な取材に裏づけされたアメリカ社会の断面図が描かれている。さすがは社会学者という感じ。やはり住居が安定しないと、何もかも荒む。内容はThe Color of Lawに通ずるものがある。
- Coming into the country by John McPhee:これもAudibleクレジット。McPheeの滑らかな文章は、スッと耳に入ってくる。アラスカの現代史の本で、聴いていると壮大な気分になってくるので、長めのランニングのお供に最高だった。アラスカに行きたくなる本。
- *現代語訳 論語 by 斎藤孝:微妙に若い頃に日本を離れてしまったので、何気に読んでいなかった論語を読んだ。年に一度は読み返したい、心を整える魔マニュアル。アウレリアスの「自省録」、マキャヴェリの「君主論」の横に置いてある。
- *アジア新聞屋台村 by 高野秀行:いくつかシンガポールに関する本を買ったからか、Kindleに勧められた。世にも不思議な東南アジアニュースメディアの会社の話。東京ってこういう不思議で素敵な小宇宙が所狭しとあるよね。
- *日本の税金 by 三木義一:日本でサラリーマンをすることになった今年、初めて年末調整というものを頂戴したので、大人の常識として税金について読むことにした。年末調整は、GHQが確定申告に一本化しようとした際、大蔵省が税務処理を民間に押し付けるために残したと知る。
- *税のタブー by 三木義一:もう一冊日本の税金について。同じ著者。タイトルほどには過激な内容は書いてなかったが、やっぱりどこの国も税法はグレーな部分が多いのね。それにしても印紙税はクソだと理解できた。
- *教養としての投資入門 by ミアン・サミ:会社で現金貯金ばかりしてる営業の人に「何か投資に関するオススメの本は」と言われ、いくつか読んでみた中では一番マシだったかな、くらいの本。なのでこれもリンクは貼りません。
- *浅草迄 by 北野武:僕は東京人だからかもしれんが、やはりお笑いと言ったらビートたけしで、昔からファンなのである。気軽に読める自伝的な話。それにしても昔の東京の無法地帯ぶりが新鮮。筆者が盛っているだけかもしれないが、それも芸風ということで。
- *バーのマスターなぜネクタイをしているのか by 林伸次:@bar_bossa さんのコラム集。やっぱり自分で商売をしている人の話というのは、同じ商売人として面白い。肯くところが多かった。時代に即して客層を微調整していくところとか、あらゆる商売に通ずるものがある。
- *バーのマスターは、「おかわり」をすすめない by 林伸次:@bar_bossa さんのコラム集第二弾。内容は重なるところもあるが、彼がバーを続けていることで、同じテーマにも新しい視点が重なってくるのが良い。Cakes色々あるけど、こと林氏をメジャーデビューさせたのは偉い。
- *日本語が亡びるとき by 水村美苗:急に小林秀雄賞受賞作品を読もうと思い手にとった。作者の背景が自分のそれに近く、頷く話が多かった。世間的には物議を醸したらしいが。特に国語の教科書薄すぎじゃねって話は、子供の頃から思っていたので、賛同してくれる人がいて安心。
- *Draft No. 4 by John McPhee☆:Pulitzer賞受賞作家が、自身の仕事方法論についた書いた数本のエッセイをまとめたもの。文章を書く前に必ずアウトラインを作り、しかもそれが時として幾何学的なものという話が面白かった。引用されている作品もいくつか読むと、更に面白い。
- *大人の条件 by 林伸次☆:@bar_bossa さんの最新作。一番頷いてしまったのが、おじさんの昔話がなぜ嫌われるかって話と、男性脳と女性脳の話かな。今後とも面白い話を書いてくれると期待している。
- *走る奴なんて馬鹿だと思っていた by 松久淳:Kindleからオススメされた本の中では今年一番面白かったかもしれない。何より作者のランニングとの付き合い方が、自分のそれと酷似していて、終始笑いっぱなしであった。自分と似たような人の話を読むとほっこりする。
- *武漢日記 by 方方☆:全てが始まった武漢で、ネットと検閲の圧力に負けず、日々の状況を淡々と綴った日記。いわゆるリベラルメディアのCCPこき下ろしと違い、CCPによる統治を前提に、政府の責任に言及している。今の中国のインテリって良い意味で中庸だなと感じた。