2016-12-31

2016年に読んだ本

参考:2015年に読んだ本

今年は仕事ばっかりで、ついに一本もブログを書かなかった。その分仕事をがんばっていると思いたいが、やっぱりたまには考えていることを日本語で書きたいとは思う。

  1. 言志四録:社長に勧められて読んだ本。日本的なリーダーのあり方について書かれている本だが、1年経った今あまり内容を覚えていないので、また読むべきである。  
  2. データ解析の実務プロセス入門:Excelとawkで知られる(?)データサイエンティストあんちべ氏が書いた、現場に近いデータ分析の話。AIブームの昨今だが、元金融(あんちべ氏も確かそう)のデータ分析屋としては、基本が大事だし、基礎をマスターするのもそう簡単ではない。ツールにこだわったり、流行りに流されてる暇があったら、ひとまずこの本を読んだほうがいい。大阪ガスの河本氏が書いた本と対をなす本。
  3. 10年戦えるデータ分析入門 SQLを武器にデータ活用時代を生き抜く:Cookpadの青木峰郎氏が書いた分析的SQLの本。「会社のデータベースにいろいろデータは入っているらしいが、どうSQLを書いたら欲しい結果が戻ってくるのかわからない」という人向けの良書。エンジニアというよりはデータアナリスト、プランナー向けの本。   
  4. Eternal Curse on the Reader of These Pages:Manuel Puig2冊目。"Betrayed by Rita Hayworth"よりは、わかりやすかった。Puigは話の構成がうまい。
  5. Modern Technical Writing:Palantirで製品ドキュメントを書いている人が書いた、技術的ドキュメント作成の指南書。当然のことながら、この本自体も非常に読みやすいドキュメントとしてまとまっている。タダでKindleで読めるので、技術ドキュメントの書き方で悩んでいる人はぜひ。
  6. How to Write Short:短く。的確に。正しく。がんばれ。Roy Peter Clarkの良書。
  7. Balzac and the Little Chinese Seamstress:文化大革命時代の著者の経験を元に書かれた小説。積ん読消化を兼ねて読んだ。話そのものは、井上靖的な、純文学的な、正しい甘酸っぱさの詰まった、割りとどうでもいい話である。特筆すべきは、文化大革命と共に育った著者が、大学時代にフランスに1984年に留学、18年語の2002年に、この小説をフランス語で書いた、ということだ。伝えたい思いがあれば、母語である必要はないと再認識させられた。
  8. The Kraus Project:20世紀初頭のオーストリアの思想家・風刺作家、Krausのエッセイを、アメリカの作家JonathanFranzenが翻訳し、注釈を加えたもの。この注釈がクソ長い。Franzenは文章がうまいので、ついつい読んでしまうが、注釈の半分くらいは、Krausのエッセイとあまり関係のない、Franzenの自伝的なチラシの裏感満載な散文。Swarthmore大学の独文科からフルブライト奨学金でベルリンに留学している時に、ほとんどドイツ人と満足に話せず、寒い自室でひたすら英語の本を読んでいた、というくだりは、筆者も共感した。Franzen頑固親父にも、青い時代があったんだなと、少し親近感を覚えた。
  9. 数学をいかに教えるか:日本が世界に誇る数学者志村五郎が書いた、数学教育に関する本。東京に行くたびに、帰りの機内用にオアゾの丸善で2−3冊本を買うのだが、その時にはなぜか読まず、1年くらい経ってから読んだ。本題だけなら良書なのだが、ところどころにプチ自慢と、知己・同僚・社会・システムに対する悪口が散りばめられており、後味が悪い。よく言えば、偉大な専門家であることと、人間として尊敬できることは全く別のことである、ということを再認識させてくれる。
  10. Play Bigger:仕事で読んだ「カテゴリデザイン」というマーケティングの話。B2Bハイテク業界で働いている読者が何人いるのかわからないが、その人たちにはおすすめ。
  11. Economic Growth:仕事で読んだ。経済成長の話ではなく、B2B企業の経済的な売上向上のためには、account-based sellingをやりましょうというニッチ本。
  12. The Power Broker:この本を買ったのは少なくとも3−4年前なのだが、1100ページ以上もある本で、いったん250ページくらいまで2013年に読んで、そのまま放置していた。それを2014年の暮れにまた1ページ目から読み始め、夏頃に読み終えた。良くも悪くも今のニューヨークの礎を築いたウルトラ公務員である。Mosesのすごいところは、一度も選挙で勝つこともなく、50年以上に渡ってニューヨーク(市も州も)を裏から牛耳ったことだろう。タイトルどおり、権力というのはどのようにして生まれ、どのように使われ、どのように失われていくのかを、綿密にリサーチされたMosesの人生を通して描いている。作者のRobert Caroは寡作で、50年近いキャリアの間で、この本と、現在も続いているJohnson大統領の伝記の2冊しか本を書いていないのだが、両方ともPulitzer賞を受賞しているという打率10割の伝記作家である。仮に途中で飽きても、漬物石・鈍器・PCモニターの高さ調整具として副次的利用価値があるので、ぜひ。
  13. 築地の記憶 人より魚がエライまち:築地が移転するというんで、何か思い出にと買った築地に関する本。いろいろと築地の内情が書いてある、ホクホクとする本。移転の話にはいろいろと暗雲が立ち込めているが、場所はどうであれ、エコシステムは大事にしていってもらいたい。
  14. 社内プレゼンの資料作成術:元ソフトバンクの前田鎌利氏による。ソフバン流社内スライド作成術。プレゼンの仕方というより、プレゼンの話の流れの組み方、そして実際のスライドの作り方について書いてある。個人的にはプレゼン作りが上手じゃないので、まずは座学と思って買った。今もプレゼンを作る時に必ず読み返す本。  
  15. 社外プレゼンの資料作成術:先の本の社外バージョン。より感情およびコンテクストを伝えるような作りになっている。合わせて買うとよい。これを読むと、孫正義氏のプレゼンの骨子みたいのが垣間見える気がする。
  16. 重力ピエロ:初伊坂幸太郎。弟が降ってくる話。ミステリに昔ほどのめり込めないのはなぜだろうか。
  17. Europe Central:William Vollmannの長編小説。今年読んだ本では"The Power Broker"に次ぐ長さである。"The Power Broker"を読了後、すぐに読み始めたので、なんだかんだ半年読んでいた。20世紀の最初の2/3くらい、Lenin・Hitler・Stalinといったイカれた主人公たちに振り回された、ドイツとロシアの激動の時代を、Shostakovich・Paulus元帥・Kollwitz・Vlasov中将といったサブキャラの視点から書いた歴史小説。Vollmannの本らしく、プロットがあってないようなもので、まあよく調べられた小話がたくさん書いてある。フィクションではあるが、20世紀の独露関係の勉強になった。
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