2013-03-14

文房具ものがたり

あまり取り柄がない僕だが、人に関する記憶力だけは、超人的によい。先日、ツイッターで小学校時代のクラスメートと少しやりとりがあり、それをきっかけに色々と小学校の塾時代のクラスメートのことを思い出した。

そのまま話しても芸がないので、誰がどんな文房具を使っていたかを軸に振り返ってみる。もちろん本名は使わないが、知ってる人が読めばわかるように、あだ名あるいは部分的イニシャルを呼称に使うことにした。

I東Y人

I東くんほど生涯で机を並べた人はいないんじゃないだろうか。ぼくの通っていた塾は、健気な子供たちを授業ごとに成績順に並び替えるヒドいところで、いつも成績が拮抗していたI東くんとぼくは、しょっちゅう席が隣だった。彼はいつもBの三菱エンピツを、筆を持つ様に軸の上半分で握って使っていた。I東くんはとにかく達筆で、さらに異様に字を書くのが速かった。そんな彼は、今は物理学者の卵だという。とても賢い努力家だったので、きっとスゴい学者になるに違いないと遠地から応援している。

たけ

今でこそ本も出版しているイケメンマッチョだが、小学校の時は、別にイケメンでもマッチョでもなかったと思う。ただ筆圧は強く、どちらかと言えば丸字だった。これは今でも変わっていない。エンピツに関してはこだわりはなかったようで、成績が良いともらえる塾オリジナルのエンピツやら、彼が通っていた某有名小学校のエンピツやらいろいろと使っていた。ただ基本的にはエンピツを使っていた。

なりてぃ

たまに忘れそうになるが、I東くんとたけと同じく、中学校も一緒だった。なりてぃは文房具に関しては独特で、いっつもナイフで削ったエンピツを使っていた。たけも筆圧が強かったが、なりてぃの比ではなかった。プリントを貫通するんじゃないかというくらい筆圧が強く、手が疲れないのかなといつも不思議だった。どうやら名古屋にいるらしい。今でも筆圧は強いんだろうか。

たかじゅん

たかじゅんはなりてぃの真逆で、筆圧がまったくと言っていいほどなかった。本人も見るからにふにゃふにゃで、字もなんか覇気がなかった。彼はエンピツもシャーペンも両方使っていたのだが、どちらで書いた字も、脂ぎった手でこすったら消えてしまうんじゃないかというくらい薄かった。

そんな彼が持っていたシャーペンが独特で、短めのネイビーブルーの軸に黒いキャップがついており、先端が収納できるタイプだった。すごい軽そうで、ぼくも欲しいと思い、近所の文房具屋で一所懸命に探したのを覚えている。

あと、本当にどうでもいいことなのだが、たかじゅんのエンピツの削れ方はセクシーだった。先っちょから、内側に少しえぐれるように削れていて、黒い芯が多めにむき出しになっていた。それに比べぼくのエンピツは、先っちょから持ち手のところに向かって直線に削れており、どうしてこんなに差が出るのか不思議だった。長い試行錯誤の末、ぼくの鉛筆削りが電動であるのに対し、たかじゅんのが恐らく手動でハンドルを回すやつだからという結論に辿り着いた。そこで、手動ハンドルの鉛筆削りを買い、試しに削ってみたところ、たかじゅん削りになるではないか!見事にリバースエンジニアリングすることができ、ちょっとした満足感に浸ったのを覚えている。でも、1日に何回も手動でエンピツを削るのが億劫になり、2週間くらいで電動鉛筆削りに戻った気がする。というか、そんなに気になるんだったら、週3回も顔をあわせている本人に直接聞けよって話なのだが。

そんな彼も今や上場企業のソフトウェアエンジニアである。プログラムをするというイメージが全くなかったので、最初話を聞いた時は驚いた。人生おもしろいものだ。

ケントデリカット

なりてぃと一緒で忘れそうになるが、塾も中学も一緒だった人の1人だ。ケントデリカットは、同じシャーペンを壊れるまで使い倒すやつだった。3年間同じクラスだったが、そのうちの1年半くらい、同じシャーペンを使っていた。軸は透明のプラスチックで、クリップとグリップがエメラルドグリーンだった。ただ、ケントデリカットは手汗をたくさんかくのか、グリップの部分が汗を吸ってフニャフニャに膨張しており、少しでも筆圧を高くして字を書こうものなら、グリップが抜け落ちそうだった。ケントデリカットも、たかじゅんに負けないくらい字が薄く、当時、ケントデリカットの字が薄いのは、このズルズルグリップのシャーペンのせいで筆圧を上げられないからだと決め込んでいた。

しかし、中学受験本番の数ヶ月前に、ズルズルグリップは姿を消し、たかじゅんと同じシャーペンに切り替わったのだが(やつらがどこであのシャーペンを入手したのか未だに謎である)、それでもケントデリカットの字は薄かったので、自分の仮定が間違っていたことに気づき、ちょっと残念に感じたのを覚えている。

いくひで

いくひでの文房具は「唯一」という意味でユニークだった。青いボディに黒いゴムのグリップの、フレフレシャーペンだったのだが、数年に渡る酷使の結果、黒いグリップの部分が一部はがれており、そこをペンだこ防止用のオレンジ色と緑色のスポンジの輪っかで補強してあった。いくひでオリジナルである。4年生の最後に入塾した時から受験まで、ずーっと同じシャーペンだったのが印象深い。あのシャーペン、まだ持ってんのかなあ。

いくひでも実は中学が一緒で、中1の頃から「将来は医者になる」ってなぜか言っていて、そのまま初志貫徹で医者になった。ふわふわ生きているぼくとは大違いである。

M島さん

ぼくと同年代の人はわかるだろうが、小学校の時に異様なほどにDr. Gripが流行っていた。もちろん塾でもDr. Gripperは何人かおり、M島さんはその1人だった。ぼくが知る限り、ずーっとDr. Gripのフレフレタイプを使っていた気がする。ちなみに一言も話さないT尾さんという女の子もいたのだが、彼女はフレフレタイプではないクリップつきのDr. Gripを愛用していた。

M島さんは、今NPOの共同創業者をやっていて、結構メディアに出ていたりする。昔はどちらかというと静かな人だったので、正直起業していることに驚いている。

すずきょん

すずきょんはとにかく字がきれいだった。算数の授業かなんかで、席が隣になり、交換採点した時に、あんまり字がきれいだったので、答えが間違っていてもマルしそうになってしまった。数年前に日本で年末テレビを見ていたら、なんとなく面影がある女性が某テレビ局の解説員として出てきて、名前が一緒だったので、もしかしたらと思い、そのままチャンネルを変えずに見ていたら、手書きのフリップを出してきて、それを見た瞬間、本人だと確信した。きれいな字はまったく変わっていなかった。

ちなみにすずきょんはエンピツ派だ。話がずれるが、中学の同級生に、数学の天才のO島くんという人がいて、この人もすごい字がきれいなエンピツ派で、それ以来ぼくの中で「本当に達筆な人はシャーペン派ではなくてエンピツ派」という謎のセオリーが出来ている。そもそもサンプル数2でセオリーにしてしまうのはどうかとも思うが。

なごじら

後にも先にも、なごじらほど字が汚い女性と会ったことはない。今さっき「本当に達筆な人はエンピツ派」と書いたが、「エンピツ派だからといって達筆だとは限らない」の最たるものがなごじらだ。とにかく字が汚くて、交換採点をするたびにびっくりしていた。

そんななごじらだが、小5の時に喧嘩になり、ぼくは彼女のあたまを黒板消しで叩いて先生にこっぴどく怒られた。チョークまみれの頭で帰宅した娘を見て彼女の母親が真っ青になったのは言うまでもない。何が塾であったのか散々1人娘を問いつめたらしいが、なごじらは「あなたには関係ない」と言い張り、ぼくのことをかばったそうだ。結局先生がなごじらの自宅にお詫びの電話を入れることでぼくの悪さが発覚し、なごじらの母親から電話をもらったオカン(親同士も仲が良かった)に、「なごじらさんの方が余っ程男らしいね、あんたより」と言われたのを覚えている。

大学一年生の時に新宿のSEGの近くのエクセルシオールカフェで再会したっきりだ。男勝りな雰囲気は消えて大人しい女性になっていて、なんかすんげえ分厚い小説を読んでいた。今なにやってるんだろうな。

おすぎ

おすぎはとにかく字が汚かった。シャーペンだろうがエンピツだろうがボールペンだろうが、何を使っても、解読不能な字を書いていた。ちなみに彼のあだ名が「おすぎ」だったのは、名前に「すぎ」が入っているからだが、その彼と親友だったというだけで、ぼくのあだ名は「ピーコ」だった。おすぎとは別の中学に行ったので、その時点でこのあだ名は消滅した。先日、M島さんとすずきょんとおすぎと会った時に、ピーコというあだ名が復活し、ノスタルジックな気分になった。

書いていたらもっと思い出してきたけれど、ちょうど10人とキリがいいので、ここら辺で。

Creative Commons License