2021-02-15

あえて言おう、Airpods Maxであると

Airpods Maxを買った。

Airpods Proではない。 昨年12月に発表された、バカでかいアッポー謹製のヘッドフォンである。ここまで説明すると、2人に1人くらいはこう言う。「あーBeatsっすか?」

断じてBeatsなどと言う買収した子会社の紛い物ではない。アッポーのデザイナーとエンジニアが、コロナ禍でFaceTimeという旧世代ICTツールを駆使し、研究に研究を重ね、プロダクトマーケティングの無茶振りに応え、なんとかクリスマス商戦に間に合わせた、血と涙の結晶のことだ。

正直に言うと、12月に発表があったタイミングでは、ピクリとも心を動かされなかった。そもそもヘッドフォンにこだわりは無いし、値段が値段過ぎて、買う理由が見当たらなかった。急いで注文していた人たちをツイッターで見かけては、「みんなアッポー好き過ぎだろ」と傍観していたくらいだ。

それが、だんだんとレビューを読むうちに欲しくなってきてしまった。Yuka Ohishiのレビューを見て少し心が動き、ヘッドフォンにクソうるさいMarco Armentの概ね前向きなレビューでその品質を確信した。去年仕事向けに買ったJabraのヘッドセットが半分イカれていること、左右両方とも2代目のAirPodsの電池が1時間持たなくなってきたことなども、背中を後押しした。

何より買う意欲をそそられたのは、apple.comで在庫を確認した時だ。確か1月後半くらいだったが、なんと入荷するのは4-6週間後だというではないか。どれだけ需要過多なんだAirpods Maxよ!そんな長い間待ってられるかとメルカリにさっと飛んだ。

今思えばこの時に気がつくべきであった。メルカリに何個も売っているだけではなく、値段が良心的だったのだ。本当に需要過多ならプレミアムが付いているはずなのに、何なら公式サイトよりも安いではないか。並ぶ67000円の希望価格が「損だけはしたくない」という売主の叫びだったのだ…

だが既にインフルエンサーマーケの沼に腰まで浸かっていた僕が、そんなメッセージに気づくわけがない。チェックアウトは俊速、入金したそばから売主にメッセージで催促、5日後にはアッポーの叡智が詰まったAirPods Maxを手にしていた。

そこまでして手に入れたAirpods Maxさんだが…あえて言おう、カスであると。

まず、重さがカスである。重すぎて、初日は着けているだけで首が凝りそうになった。その後だいぶ慣れてきたが、重いことには変わりない。重すぎて、長いミーティングだと使うのを躊躇してしまう。そもそも買った理由の半分くらいが、電池の持ちが悪い初代AirPodsの代わりに使うはずだったのに、電池の前に僕の首が持たない。例のブラケースに入れて、頭頂部のメッシュのところを持つと、その重みたるや、まるでるろうに剣心御庭番翁のトンファーである。ドヤ顔で登場したくせに、全くもって使い物にならなかったあたりもそっくりだ。

次にカスなのが、眼鏡との相性の悪さ。耳あてに圧迫された眼鏡フレームが、耳の後ろ辺りを締めつけてくる。最初は平気なのだが、30分、1時間と経つうちに、頭痛の元となってくる。僕の頭がデカイからなのかもしれないが、それにしても痛い。眼鏡をしないで装着するという解を得たが、視力0.01で極度の乱視の筆者がこれをやると、視覚が奪われた状態で最高の音質環境に身を置くことになり、10分後には寝てしまう。睡眠導入デバイスとしては優秀だが、仕事道具としては、カスofカスofカス。

最高の音質と書いたが、確かに音は申し分ない。しかしやはり値段がカスである。67000円。売り抜けたメルカリの元持ち主の安堵のため息が、ノイキャンを通貫して聞こえてくる。いや、まあいいんだけど、これだったら別の軽い、ANC付きの、頭が痛くならないヘッドフォンを買って、美味しい寿司を食べてもお釣りが来たなと思うわけで…

最後にひとつ良いことがあるとすれば、テレカンした時にネタになることだ。アッポー信者はすぐ気づいてコメントしてくれるし、そうじゃない人でも、ロボットアニメを彷彿させるそのデザインに一言言わずにはいられないらしい。そこで「HAHAHA7万円近く溶かしたぜ、このクソヘッドフォンに」と言えたら、あなたも僕と同じ立派な資本主義のブタである。

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