2011-09-27

HP:ウンコ取締役会の罪状

Hewlett-Packard社の過去10年あまりは、失望につぐ失望の時代と言っていい。つい先週もLéo Apotheker氏がCEOの地位を追われ、eBayのCEOを務めたMeg Whitman氏にバトンタッチとなった。テックの世界でも、この交代劇は話題となり、ジャーナリストが皆こぞって記事を書いたのだが、その中でもこの記事は、この10年のドタバタ劇をうまく風刺しているので、ここに一部翻訳することにした1。ぼくの翻訳が信じられなかったら、原文を読んでみるとよいだろう。

  • 1999年、Carly Fiorina氏をCEOに迎えいれる。彼女はLucent社のセールスのお偉いさんで、HPのようなテックの巨人の舵取りをする資格など、これっぽちもない。テックの世界で他に全く人材がいなかったんだろうか。このクソ人事は、取締役会が後継者探しを怠ったことに起因する。
  • 2002年、散々内輪もめしたあとにCompaq社の買収を決断。250億ドルもの大枚をはたき、合併会社の36%を譲るという大盤振る舞い。Hewlett家の連中とも舵取りを巡って大もめ。
  • 奇跡的な好判断というか、数字には逆らえないのか、2005年にようやっとFiorina氏を追放。代わってNCR社を再生した手腕を買われMark Hurd氏がCEOに。
  • 取締役(Patricia C. Dunn氏)による、従業員に対してのスパイ行為が発覚。HPの最高顧問弁護士が辞任。もちろんDunn氏も辞任2
  • コストカットのやり過ぎと言われながらも、Hurd氏のもとHPがIBMを抜いてテックの最大手に返り咲き。株主はもちろん大喜び。
  • 5年が経ち2010年。確たる証拠もないが、エッチなことをしたとか会計簿をごまかしたかとかで、Hurd氏が辞任に追いやられる。辞任に関しては賛否両論あるだろうが、その後の取締役会の行動に関しては、「否」と断言できる。取締役会の要求のもと、HPはHurd氏の人格を強く非難する声明を発表。散々非難したあげく、3000万ドルの退職金を払うという謎の行動に出る。
  • Oracleの帝王Larry Ellison氏がすぐさまHurd氏を起用。歯に衣着せぬEllison氏はHP取締役会をアホ呼ばわりする。Joe Nocera氏もNew York Times紙のコラム追撃。「HPが再び十八番を見せてくれた。自爆だ」と書かれる。
  • 「確実に」HPの企業機密をOracleでの仕事に応用するという取締役会の判断のもと、HPはHurd氏を提訴することに。2週間後、契約の内容的にも常識的にも裁判で勝てないと判断。示談に。
  • エロ小賢しいHurd氏を追放したはいいが、社内で人材を探し育てるという基本的なことができないので、再び外からCEOを招聘することに。今度はB2Bの大手SAPの社長を務めるLéo Apotheker氏。余程急いでたんでしょう。New York Times紙の「会いもせずに社長を決めた」という記事で、取締役の大半はApotheker氏と面会すらせずに判断を下したことをバラされる。Hurd氏に対する必要のない弾劾といい、会いもせずに後継者を決める無責任さといい、少しでも良識があれば自ら辞任するべきの取締役たちだが、もちろんそんなことはなし。ちなみにApotheker氏に面会すらしなかったことの言い訳は「だって内輪もめで、くたくただったんだもん」Hurd氏を辞めさせるので貧弱ゴブリンたちは手一杯だったらしい。
  • 2010年9月Apotheker氏就任。当然のごとく取締役会を出来る限り取っ替える。OracleのCOOかつVCの大手Kleiner PerkinsのManaging Partnerを務めるRay Lane氏、元eBayのCEOで、大金をぶちこんだのにカリフォルニア知事選で負けたMeg Whitman氏を含む7人を新しく取締役に招聘。
  • まだ一年も経っていないんだが、お約束のCEO解雇。Léoの時代も終わる。PCビジネスから離脱したり、WebOSの開発を終了したりした結果、株主の反感を買い、一気に売りに。結果的にApotheker氏も取締役会に売られることに。まあよくあることです。
  • ここまでは仕方なかったが、あえて問題を起こすのがHP取締役会。何を思ったか、一挙Apotheker氏の悪口を言いまくることに。Ray Lane氏が、ウンコを代表して長ったらしい解雇の理由を述べるが、肝心の「なぜ取締役会はApotheker氏と同調したのか」「今現在の取締役会のビジョンは何か」といったトピックはスルー。
  • Apotheker氏はオトナなので、礼節をわきまえたお別れの手紙を社員宛に送る<-今ココ。


  1. "quipped"は、基本的にぼくの書いたものを載せていくつもりだ。ただ今回のように、既に書かれたものが、ぼくの考えを見事に代弁してくれている場合、リンクを貼り、和訳を書くのが、ライターとしてのエチケットだと思う。

  2. Dunn氏ならぬDone氏に。

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