2011-09-19

Quoraのパーティーに行ってきた

土曜日の夜、Quoraユーザーのパーティーに行ってきた。

みんなQuoraって何だと思うだろうから、簡単に説明すると、実名制の質問サイトだ。いくつかリンクを貼っておくと、

などなど。ぼくは2010年の5月くらいに使い始めて仕事がヒマな時とか、週末やることがない時とかに質問をしたり、答えを書いてきた。まあそれなりにサイトに時間を割いたので、今は一応Reviewer(質問や答えを検閲する役)と日本に関する質問の管理人の一人として関わっている(ということになっている。実際はほとんど何もしていません。)

なんといってもQuoraの売りはコンテンツの質の高さだ。まず、質問を答える人たちが「その道の人」であることが多い。特定の会社に関する質問だったら現・元社員が、映画に関する話だったらプロデューサーが、学問に関することだったら大学教授が、結構真面目に質問に答えてくれる。質の高い答えが返ってくるというのは質問した側からしてもテンションがあがるわけだ。もう一つは、インターネットのコンテンツには珍しく、長い答えでも、内容に意味があれば高く評価される点だ。2ヶ月ほど前に翻訳した「ぼくはこうしてプログラミングを覚えた」も、元々はQuoraの質問に対する答え1。きちんとしたデータはないけれど、基本的によく練り込まれた長文はQuora上では高く評価されている。みんなが注意散漫になりがちなネットでは珍しい現象だ。

Quoraそのものに関しては他にもいろいろ話すことはあるけれど、ちょっとパーティーの話を。

第一印象は「Quora金あるなあ」。サンフランシスコのTres Agavesというレストランを貸し切ってやったのだが、立食で300人はいただろうか。二時間ほどのパーティーだったので人の出入りを考えたら、のべ600人近くいたかもしれない。その全員分のオードブルとドリンク、全部Quora持ちだった。低めに見積もっても一人20−30ドルだから、これだけで12−18万ドル、つまり1000ー1400万円の出費だ。ユーザーが命のプロダクトだから、ある程度のリップサービスはわかるが、一晩で1000万円以上の出費というのはビビった。創業者たちも既に超リッチだから(このサイトの情報が正しければ、創業者の一人、Adam D'Angeloは6億8000万ドルつまり500億以上の資産家ということになる)わからないわけでもないけれど、流石にバブっている感は否めなかった。

一番の感想は、「QuoraはQ&Aの形式をとった出会い系サイトなのかもしれない」ということ。何人か会ったことのない人と話をしたけれど、なんせQuoraで彼らが書いた答えを何度も目にしてきているので、話しかけるにしてもあんまり不思議な感じがしなかったし、周りでも、どんどん人が打ち解けておしゃべりしていた。「出会い系サイト」というとなんかイヤらしい、少しアングラなイメージがあるが、よく考えたら、オンラインでの触れ合いをきっかけにオフラインで人が会うということは、今ではそこまで不思議なことではない。ぼくも数人ではあるけれどTwitterを通して友達ができたし、Quoraを通して出会った人も何人かいる。

ぼくたちの感じるオンラインコミュニケーションに対する懐疑心というのは、匿名性による部分が多いと思う。性別も、本名も、所属も何もわからない、未知に対する恐怖感だ。その点、Quoraは徹底して実名で登録することを強制しているし(まあ頑張ればシステムを騙すことはできるだろうけれど)、何よりも多くのユーザーがとても個人的な情報を、質問に対する答えというかたちで共有している。実名で個人的な話を共有しあえば、例えそれがオンラインであっても、人はお互いに心を開く。例えばエイズと闘った半生を語ってくれたGary Steinさんという人がいるが、もし明日ばったり道であっても、結構自然に会話ができるんじゃあないかなと思う。会ったことすらないけれど文章を通して感じる親近感。これは文通に通じるものかもしれない。

興味深いのは、QuoraとFacebookの人間関係に対するアプローチの違いだ。Facebookはあくまでもオフラインの人間関係をオンラインに持ってくるサービスだ。基本的に会ったこともない人をフェイスブックの友達として承認も申請もしないだろう。Facebookは、オンラインから人間関係を拡げていくという目的に対しては全く使えないのだ。Quoraはその逆で、オンラインで「質問と回答」という媒体を通してできたオンラインの繋がりを、ユーザーパーティーとか、ローカルなオフ会としてオフラインの交流に発展させている。会社としてのQuoraのモットーは"continually improving knowledge base"(向上し続ける知のデータベース)ということだけど、ぼくの中では"continually connecting human networks"(繋がり続ける人の輪)になると考えている。



  1. 実はこの質問、ぼくがしたものだ。自分で質問しておいて返ってきた答えを日本語に翻訳するという完全な自作自演。

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