2013-12-13

考えることについて書くときに僕の書くN個のこと

最近、ブログを読んだ人から、文章の校正を頼まれることがあった。

人様に書き方を指南できるほど文章力があるとは思えないので、もっとちゃんとした人にお願いするように言い、やんわりと断った。が、少し考えてみると、他人に自分が書いたものを見せるというのは、相当な勇気がいることだ。相手の勇気に敬意を表したいと思い直し、朱筆を入れた。後日、参考になったと御礼の連絡がきた。こんな第三者の目でも役に立ったようだ。

その作業をしている時に気がついたのは、自分自身が文章を読み書きする時に、結構いろいろなことに注意を払っているということだ。多分それに気がついたのは、どう相手の文章を改善しようかと思案する中で、自分自身の思考パターンを省みたからだろう。このままにしておくと、また誰かに校正を頼まれる時まで忘れてしまうので、備忘録として書き留めておく。

こっからは、すげー箇条書きである。

ちなみにタイトルだが、もちろん村上春樹へのオマージュである。「書くことについて考えるときに僕の考えること」とどっちにするか迷ったのだが、あらためて考えてみると、ブログを書くのは、普段から考えていることを書くことで整理したいからで、そういう意味では「考えることについて書くとき」の方がより正確である。あと、今、読者の眼前にあるのは「僕の書くこと(what I write)」であって「僕の考えること(what I think)」ではないという、見落としがちな事実も考慮している。

今度こそ、すげー箇条書きである。

  1. 言いたいことが一文で書けるまで筆はとらない。書く前に考える。
  2. その言いたいことが詰まった一文をどこに置くかは超重要。読んでもらいやすいのは

    • 最初の一文
    • 最後の一文(そこまで読者を引っ張れるなら)

    が圧倒的だが、段落の最初とか最後でもいいと思う。一番やっちゃいけないのは長い段落の真ん中とか。

  3. その言いたいことをどう言うかだが、大きくわけて

    • 過激に言い切る
    • 丁寧に説明する

    のどちらかである。過激に言い切ったほうが潜在的聴衆は増えるが、丁寧に説明した方が、賢い読者は喜ぶ。逆にあんまりいい加減なことを過激に言い切ると、賢い読者の心は離れるので、塩梅が大事。

  4. 当たり前だが、できる限り具体的に、「こんな読者だったら、今から自分が書く文章を必ず気に入るに違いない」という読者像を、なるべく具体的に想定する。ちなみに自分はいつも、「20ー30代の、それ相応に高学歴でホワイトカラーの仕事に就いてはいるが、バリバリキャリア志向ではない、一日一善したいくらいの善意はある人」を想定して書いている。
  5. 読者は自分よりも賢いが、これから書くことのコンテクストに関しては無知だということを忘れない。
  6. なので、言葉の定義は厳密に考える。その言葉は、果たして自分の読者にとって既知の言葉なのか。自分特有の解釈をしていないだろうか等。
  7. 言葉の定義と同じくらい、言葉の配置も厳密に考える。たとえば、「厳密に考えられた言葉の配置」だと、厳密に考えられているのが「言葉」なのか「配置」なのかわからない。
  8. 句読点も大事。「この文、このままだと長いから読点を打とうかな」と思う時は、必ず「ここで一度句点を入れる」というオプションを常に検討する。でも最終的には、句読点のルール云々よりも、読みやすさを最重視する。
  9. 読点を打つとちょっとブツ切り感が強すぎる場合、平仮名・カタカナ・漢字が持つ「お互いルックスが違いすぎて、視覚的に境界で切れる」感を利用する。例えば前文だと、「ちょっとぶつ切り」より「ちょっとブツ切り」の方が読みやすい。
  10. カタカナは文章構成のからくりとして、非常に万能である。普段は平仮名あるいは漢字で書く言葉も、カタカナにすると、急にポップになったり(例:キモチ)、高尚すぎて理解が及ばない感が出たり(例:キカイガクシュウ)する。逆に平仮名にすると、急に親近感が増す。
  11. 常に自分のトーンを意識する。
  12. トーンは非常に大事です。トーンを大きく変えることで、内容的には順接的でも、読み手の感覚として、逆接的な流れを作ることができます。
  13. 今ので逆接的な流れが作れたとは決して思わないし、けっこう話が飛ぶが、「動詞+副詞」という構成をみたら、それを「動詞」だけで置き換えられないか考える。例えば、「けっこう話が飛ぶ」の代わりに「話が飛躍する」とか。そうすることで、無駄な形容詞や副詞がなくなる。
  14. 無駄な言葉は省く。短ければ良いというものではないが、長く書くのであれば、それは内容の濃さによる必要悪であるべき。馬から落ちて落馬する類いの無駄にも注意する。
  15. 書いた文章を音読することで、初歩的な間違いや、「女の貴婦人」的なミスには気づきやすくなる。
  16. 文章をシンプルに保つのは大事だが、かといって短い文章を羅列すると、小学一年生の夏休みの日記になってしまうので、文の長さにバリエーションを持たせる。するとビックリするくらい可読性があがる。特にだーっと長い(けど読みやすい)文を書いた後に、段落を変えて短い一文を書くと、それだけで短い2番目の文は強い印象を与える。
  17. ちなみに17は素数。
  18. でも18は素数じゃない。
  19. そういえば昔19ってデュオがいたな。
  20. 読者は、必ずしも自分が意図したように文章を読んでくれない。例えば今の17-19は、筆者は良かれと思って書いたイタズラだが、読者の大半はくだらないと思ったことだろう。
  21. 読者は、その人特有の視点で読む。別の言い方をすれば、たとえ文章すべてに共感できなくても、その文章の中で読者の視点と強く共鳴するものがあれば、残りの部分は目をつむってくれる。なので、ひとつのことを多角的な視点で書く方が、単一の視点で複数のことについて書くよりも、多数の人間の共感を得やすい。言わずもがなだが、多角的な視点で複数のことについて書いたら収拾がつかなくなる。
  22. 読者の共感を得るというのは、文章を書く最終的なゴールであっても構わないくらい大事。
  23. 文章を書く最終的なゴールは、読者の孤独を癒すことでもいい。
  24. 読者の孤独を癒すにしても、共感を得るにしても、文章は具体的で、ストーリー仕立ての方がいい。
  25. というのも、人間の思考回路は、具体から抽象に向かうようにできている。いきなり概念をぶつけられるよりも、お話の中に概念を見いだすほうが、楽なのだ。文章を読むというのは、それだけで疲れる行為だ。できるだけ楽をさせたあげたまへ。
  26. 顔文字は極力使わない(^_^;)
  27. 読者がツッコめる隙を見せることで、「読む」という得てして一方通行な行為を、少しインタラクティブにできる。インタラクティブにすると、それだけでちったあ楽しめる文章になる。
  28. 28は完全数。ちなみにスタンフォードの著名な理論計算機学者Donald Knuthは、28人目の博士論文にサインをした後、「ぼくは28人の学生を指導した。28は完全数だ。だからもう指導教官は務めない」といって、学生を受け入れるのをやめてしまった

28は完全数なので、僕もここでストップする。N=28。

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