2012-06-21

ポジショニングと原監督

原監督の女性問題の話を海の向こうから観察していて、改めてポジショニングの大事さを痛感している。

ポジショニングというのはマーケティングで使われる言葉で、要は、比較対象と比べ、どうやって自分の立ち位置を決めるかということだ。例えばバーでいったら「とにかくビールの種類が豊富」だとか「とにかく安い」とか「小料理が美味い」など。まあ何でもいいから他のバーとの差別化をどう図るかが、ポジショニングの鍵となる。

そんなことが原監督と何の関係があるのかと思われるかもしれないが、今回のスキャンダルをとりわけ悪化させているのは、原監督のポジショニングのように思えて仕方ないのだ。

ぼくが把握している事実関係はこんな感じだ。

  1. 原監督が1988年、まだお盛んなころにある女性と性的な関係を持った。
  2. それについて2006年に誰かから揺すられ、一億円の口止め料を支払った。
  3. それが今回明るみになって、いろいろと釈明を迫られている。

まあ2の「誰か」が暴力団員じゃないかとか、3を明るみにしたのは誰だとかといった争点はあるにしろ、大まかな流れに関しては全員一致のようだ。巨人軍の監督としての立場に関して言えば、暴力団の関与の有無というのはデカいのかもしれない。けれど、原辰徳というブランドという点から言えば、女性と浮気をし、さらにそれをネタに脅されて口止め料を払った時点で、もう完全にアウトなのである。

でもちょっと待ってほしい。浮気をした著名人ならいくらでもいるし、脅された脅されないで黒い噂がたった芸能人だって少なくない。でも彼らの多くはのうのうと平気で活動を続けている。ではなんで原監督の場合、誰がどう見ても致命傷になってしまうのだろうか。

原因は、原辰徳というポジショニングにあると思う。いろいろと破天荒なキャラクターがいる野球界において、原辰徳は、品行方正なお坊ちゃんというキャラクターを貫いてきた。「若大将」というニックネームもそれを端的に表している。

このキャラ作りにはいろいろとメリットがある。ファンに好かれやすいキャラだし、野球も客商売である以上、ファンの意見は無視できない。また、その後のコーチや監督といったクリーンなイメージが望まれる職にも向いている。現に原辰徳は現役を退いた後、3年の評論家時代を挟み、コーチから監督へとトントン拍子で出世し、2009年にはWBCの日本代表監督も務めている。言わば野球界のエリートだ。勿論本人の実力もあるだろうが、「品行方正」「プリンス」「モラルのある熱血リーダー」といった彼のポジショニングが、功を奏したというのも事実だ。

このポジショニングの大きな欠点は、一度悪さをした時に、修復のしようのないキャラおよびポジション崩壊が起こることだ。大体のオトナは実際にそこまで品行方正ではないので、この悲劇的なシナリオの確率は低くない。今回さらに酷いのは、20年以上昔のことを掘り起こされ、今から何をしても致し方ないということだ。24年前、当時30歳だった原辰徳が、チンコの誘惑に負け、そこらへんの女と関係を持ってしまったことが、まさかこんなかたちで裏目に出るとは、想像だにしていなかったに違いない。

自分ブランドの一環として格好いい自分をプロデュースするのも構わないが、そうして作ったポジションが、自分の本質と大きく異なっていると、あるところでしっぺ返しが来るということなのだろう。

やはり自分に正直なのが一番である。

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