2013-03-06

相手のことばで話す

Codecademyという、初心者にプログラミングを教えるウェブサービスがある。このブログの読者だと、上杉周作経由で聞いたことある人が多いのではなかろうか。そのCodecademyでCommunity ManagerをしているLinda Liukasさんという人がいる。今日はその人の話。

Community Managerという職種は、日本では馴染みが薄いかもしれない。一言で言えば、サービス利用者のコミュニティのつながりを強くし、その輪をひろげる仕事で、会社の顔となる存在だ。会社の広報としての機能はもちろんのこと、ユーザーの声を聞き、それをサービスに反映させるという意味では、顧客サポートおよび製品マーケティングの立場も兼ね備えている。

ぼく自身、仕事で顧客コミュニティについて考えることが最近あり、Liukasさんがめっちゃカワイイので彼女をストーカーしていた色々な会社のCommunity Managementについて調べていたところ、こんなインタビューを見つけた。「なぜ国際舞台で活躍しようと思ったのか」という質問に対するLiukasさんの答えが深かったので、抜粋する。

I think it's much easier to think global from the start than to do something only at home, so doing things internationally was an easy decision. Coming from Finland, with 5 million people, we don't have a home-market for anything niche & cool and it's much easier to find people excited about your project if you look at the whole world. And internationalizing is easy: for our workshop in Shanghai to teach coding to girls, we just made an account on Weibo (their twitter), started following developers and finding the communities where they hang out. Google translate goes far!

最初から国際的視野を持って始めた方が楽だと思うからです。例えば私の祖国のフィンランドは人口500万人の小国で、国内市場だけでは、先進的でニッチなものを流行らせるのは難しい。1だったら最初から全世界を相手にした方が、よりたくさんの人に注目してもらえます。それに国際化ってそんなに難しくないですよ。例えば上海で女の子たちにプログラミングを教えるワークショップを開催した時は、Weiboという中国のツイッター上でプログラマたちをフォローして、プログラマたちのコミュニティの在処をつきとめました。Google翻訳で相当なところまでいけるんです!

このくだりを読んだ時に、Codecademyがなぜ彼女をCommunity Managerとして雇ったのか分かった気がした。彼女は、相手のことばで話すことの大切さを知っているのだ。

中国というのは、外国人にとってそう簡単に入れる市場ではない。インターネットの規制は厳しいし、英語にしたって、それこそ北欧みたいにみんながみんな流暢に話せるわけではない。

でも、そんなことはLiukasさんにとっては二の次で、大事なのは「中国にいるプログラミングを覚えたい女の子たちと、どうやって接点を持つか」だったのだ。ツイッターが使えないなら、パチもんツイッターのWeiboを使えばいい。中国語がわからないなら、Google翻訳の手を借りながらコミュニケーションを図ればいい。なんでツイッターが使えないんだとか、ネットの公用語は英語だとか御託を並べたところで、当初のゴールはまったく近づいてこない。それよりも大事なのは、伝えたい相手にメッセージを伝えることだ。

日本のニュースを流し読みしていると、グローバルな人材というフレーズがよく目につく。そして、まるでそれと同義であるかのように、英語が話せることの重要性を知識人たちが盛んに語る。これって実に短絡的な物事の捉え方だ。確かに英語が話せれば、相当たくさんの人間と国際舞台でコミュニケーションがとれる。でも、本当の意味でのグローバルな人材に必要なのは、英語が話せることでも、海外在住経験があることでもなく、コミュニケーションを取りたい相手と、相手のことばで話せることだ。Liukasさんは、本当の意味でのグローバルな人材な気がするし、そんな彼女をCommunity Managerに持つCodecademyの未来が楽しみである。



  1. 日本人があまり国際舞台・市場に出ていかない理由のひとつに、国内市場がなまじっか大きいことが挙げられると思う。別に無理して外国相手に商売しなくても、日本市場の中だけで、結構ビジネスが成り立ってしまうので、苦労して英語を覚えたり、他国の市場にリーチしたいと思わないのだろう。ただ、日本経済は順調に衰退しているので、これからの世代は、もっと危機感を持って、積極的に外に出ていくのかなと予想している。

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