2012-01-29
「それは違う!」と「それは考えてなかった」
先日、グーグルチャットで、大学時代の友人と議論をしていた。英語学習にどうソフトウェアを使うかみたいな話だったのだが、ヒートアップする議論の中、彼の提案に対して脊髄反射的にこう書いた。
その後も議論は続いたのだが、相手の説明や論理付けを聞くうちに、さっきのぼくの"No"は間違っていたことに気がついた。これは、相手が正しくて、ぼくが間違っていたというものではなく、先ほどぼくが言うべきだったのは"No"(それは違う)ではなくて"I didn't think about that"(それは考えていなかった)だったということだ。彼のアイデアは、自分が全く想像していなかったものだったのだ。
よくも悪くも、年齢を重ねると、知識や意見が増える。自分の意見を持つというのは大事なことだが、強い意見を持てば持つほど、「それは違う」と「それは考えていなかった」の差を意識しなくてはいけない。前者は、自分の観点や手元のデータから、間違っていると信じていることのことだ。それに対して後者は、文字どおり自分の思索の域を超えたところにあるもので、賛成するにも反対するにも十分なデータも考えも持ち合わせていないもののことだ。
誰だって否定をされるのはイヤなものだ。「それは違う」と頭ごなしに言われ気分のよい人はいない。だからこそ、面と向かって「それは違う」ということは必要以上にするべきではない。そして、我々がとっさに「それは違う」と言ってしまう多くのケースは、「自分の考えていなかった可能性」を「正しくないと思う主張」と勘違いしている時であるような気がする。
先の友人は、心の広いヤツなので、ぼくが面と向かって「それは違う!」と言い放っても、辛抱強く議論を続けてくれる。が、みんながみんなそう寛大ではない。相手の主張を注意深く吟味せずに否定してまったがために、不必要に相手を怒らせてしまい、結果的に損をすることは容易に考えられる。
ひとつ興味深いのは、順番的に、「それは考えていなかった」から「それは違う!」には行けるが、逆は無理だということだ。「それは考えていなかったけど、自分のデータや仮定に照らし合わせると、これこれこういう理由で違うと思う」というのは論理的に成立するが、「それは違う!あ、いやっw実はその可能性は考えてなかったっす」では単なるアホだ。
そんなこんなで、これから一概に賛成できない発言に対しては、事前に相手の発言の内容について十分に考えて、きちんとした反論を用意できていた場合を除き、ひとまず「それは考えていなかった」と自分の思考の及ばなさを認めようと思う。