2011-11-14
Adobeの将来
Adobeがモバイル機器上でのFlashの開発を停止した話は、すでに皆さんご存知かもしれない。「ほれ見ろ。Steve Jobsが予言したとおりになったじゃないか」と喜んでいるAppleおよびHTML5ファンをネットで目にする。確かにFlashはモバイル市場ではHTML5に競り負けてしまった。Adobeもここ数年、定期的にリストラをしており、また今度750人切るそうだ。株価も低迷しているし、Adobeもこれで終わりかと言う人もいる。
個人的な見解を述べれば、Adobeはこれからも上手くやっていくと考えている。
Photoshop
最近ではRebekah Coxのように、Photoshopを使わず(ウェブ)デザインをする人も出てきた。それでも大多数のデザイナーにとってPhotoshopは、なくてはならないツールだ。例えばCreative Suite5で追加されたContent/Context-Aware Fillを見てほしい。空白の部分を自動的に埋めてしまえるのだ。ぼくはデザインに関しては門外漢だが、Content/Context-Aware Fillが、画像修正の仕事を大幅にスピードアップすることは想像にかたくない。別の会社が、同等の画像処理ソフトウェアを安い値段で提供することがない限り、AdobeはPhotoshopで儲け続けるだろう。きちんとした技術力に裏付けされたプロダクトの強みだ。
PhoneGapとTypeKit
Adobeは今年、PhoneGapをつくったNitobiと、クラウドタイプサービスのTypeKitを10月に買収した。Nitobiが開発していたPhoneGapは、HTMLとJavaScriptでiOSやAndroidといった携帯機器のネイティブアプリが書けるようになるフレームワークだ。今話題のモバイルアプリだが、iOSだったらObjective-C、AndroidだったらJavaで記述しなくてはならない。その一方、ウェブエンジニアのほとんどはObjective-CもJavaも使ったことがない。そのギャップを埋めようというのはPhoneGapというわけだ。一方TypeKitは、カスタマイズしたタイプを、お手軽に自分のウェブサイトで使えるようにするサービスだ。今までブラウザ内のタイプは、OSによって環境が大きく違い、そもそもオプションも少なかったのだが、TypeKitの登場でこれが大きく変わった。
ぼくは、AdobeによるNitobiとTypeKitの買収を、ウェブの将来を見据えた布石だと読んでいる。Nitobiの買収は、言ってみればモバイル業界での存在感を示すためだし、TypeKitの買収は、自社のクラウドサービスをさらに充実させるものだ。どちらも、今までAdobeが得意としてきたデスクトップ(+Flash)からは程遠い分野だ。この2つの買収を考慮すると、Adobeは大分前からモバイル市場でのFlashの敗北を予想していたのかもしれない。もしAdobeが大分前からFlashの来たる死に感づいていて、対策を練ってきているのならば、Adobeの将来は、長期的には明るいと考える。将来を見据えて仕事をしている会社は、そう簡単には死なないものだ。
これを読んでAdobeの株を買って損をしても知りませんぞ。