2012-10-10

ライフネット生命のCM

ぼくが紹介するまでもないが、ライフネット生命という会社がある。インターネット(正確にはウェブ)を上手に使い、生命保険という、非効率で煩瑣きわまるサービスを、シンプルで利用しやすくしようとしている会社だ。東大・ハーバードビジネススクール卒の俊英、岩瀬大輔さんと、日本生命のベテラン出口治明さんという、年の差28の異色コンビが創業したという点でも一時期話題になった。

ぼくの元エリートという背景もあってか、岩瀬さんを直接あるいは間接的に知っている友人が何人かおり、みんな口を揃えて彼の人柄と仕事力を讃える。お会いしたことはないし、恥ずかしいことに著書も拝読したことがないが、素晴らしい人なんだろうなあと遠地から眺めている。

ひたすら敬服するだけでは、quippedではないので、敢えてイチャモンをつけてみたい。そう、批判というよりもイチャモンである。というのも、僕のように感じる人がそう沢山いるとも思えないし、木をみて森をみていないと言われること、請け合いだからである。

今日、ひょんなことから、ライフネット生命のCMを見る機会があった。ライフネット生命とはどういうサービスなのか上手に説明していると思う。

このCMには、「教えて、ズバリ」という畳句が出てくる。これを社員さんたちが言うのだが、構成はこうである。

  1. パネルを持っているナゾの男性
  2. デスクワークをしているマーケット部の男性
  3. コピーを取っている経理部の女性
  4. 会議中の3人(女性1+男性2)
  5. 女性の同僚と弁当を食べているお客様サービス部の女性

これを見て僕はすぐにこう思った。

「なんで女性がデスクにいるシーンを挿まなかったんだろう」

別にデスクにいることが仕事ではないし、コピーをとることも、弁当を食べてエネルギーを養うことも、仕事の一環だ。ただ職場の一コマを切り出すというCMの設定において、いわゆるOLのイメージにそっくりそのまま重なる「コピー取り」とか「女性の同僚とお昼」というシーンを切り出してくると、女性の職場での在り方のステロタイプをそのまま反映してしまう。CMという断片的な情報しか提供できない場だからこそ、「うちの会社では女性もバリバリ働いている」というイメージを全面に押し出すのも手ではないかと思うのだ。1姑息な誇張かもしれないが、そういった手に頼ってでも、ジェンダー差別というのはどうにかするべきだと思うのである。2

もう本当に戯れ言である。ただ、ライフネット生命さんには、生命保険だけではなく、日本社会(まあぶっちゃけアメリカもだが)に、はびこり続けるほぼ無意識のジェンダー差別も、disrupt!してほしいと思っているので、あえて言ってみた。耳障りな話、恐縮である。



  1. ぼくは別に、ライフネット生命の実態について何かを言っているわけではない。そもそも内情を知らないので、書きようがない。ただCMを見る限り、ジェンダーという視点からあまり深く考えることなく作ってしまった感があったので、指摘したまでである。これまたCMを見る限り、社内のリーダー的な立場には女性の方もいらっしゃるようだし、多分中はとても先進的なんだろうと推測している。ただ、そういうことを全てふまえた上で、CMというカラクリを上手に利用した、「女性が活き活きとした職場」というアピールをもっとしたらいいのにと感じたのだ。

  2. ぼくは決してフェミニストではないと思う。ただ、労働力とか経済成長とかいろんな意味でどん詰まっている日本を見ていて、もっと女性が働きやすい環境を作れば、より多くの総労働力を確保できるのではないかとは日頃から思っている。でもって、そのためにも、メディアや論壇もふくめ、ジェンダーをめぐる差別を排除すべく、皆さんもっと努力をすると良いとも思っている。

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