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@sotarok

先日Yahoo!Japanに買収されたCrocosのCTOである@sotarokについて話すのが流行っているようなので、ぼくも便乗する。といっても、一回しか会ったことがないのだが。

最初に彼の話を聞いたのは、@frsyukiか、@kzk_moverからだ。ぼく自身、昨年はPHPを書いてお給料を貰っており、結構PHPが好きで、仕事の合間に言語の中身を調べたりしていた。そんなこんなで、知り合いでPHP大好きなエンジニアがいるといって名前を紹介されたのが、@sotarokだった。PHPが好きすぎて本まで書いているらしい。その本を、@frsyuki経由で貰ったぼくは、僭越ながらも書評を書かせてもらった。

ブログを読む限りいいヤツそうだったので、まあいつか会いたいなくらいに思っていたら、今年の5月、ひょんなことから@kzk_moverと南青山のオフィスを訪問することになった。

南青山のオフィスというと、ハイソで、近未来的な響きすらするが、実際は、取締役の小沢さんの自宅の地下室だ。@kzk_moverが外から電話をすると、モダンなコンクリート打ちっぱなしの家から、軽そうな感じの良さそうな兄ちゃんが出てきた。ピンクのTシャツによくあう濃い青のジーパンを履いており、なんかオサレなローファーがいいアクセントになっている。あと、日本人の男の子にしては珍しくガタイがよく、Tシャツの二の腕のところがピッチピチだ。ちゃんと美容院にいっている感じの髪型をしており、心持ち開いた口元にあどけなさが残る。正直、Facebook Marketingで日本最大規模のシェアを誇る会社のCTOには見えなかった。

ぼくというサプライズゲストお邪魔虫に少し驚いたようだった。でも、一応それなりにTwitterでコミュニケーションはとっていたので、おお、いらっしゃいっていう雰囲気だった。

耐震力のある地下オフィスが売りのCrocosだったが、ぼくたちは他のエンジニアたちの邪魔にならないように一階にある、大きめのテーブルで、少しおしゃべりをした。

なんかCrocosの話とか、Treasure Dataの話(こちらは@kzk_moverがCTO)とかいろいろとしていたはずだが、僕は何も覚えていない。というのも、会話の途中で、@sotarokのTシャツの右胸のところに、「Perfume」と書いてあることに気づき、「こいつもPerfumeのファンなのかな」ということが気になって仕方なかったからだ。でも@kzk_moverと真面目に仕事の話をしていたので、Perfumeのファンかどうか聞きそびれてしまった。[1]

あ、もう一つだけ思い出した。なんか途中で後ろを、眼鏡をかけた、ジブリの映画に「寡黙なゴーレム」という役で出てきそうなヤツが、のっしのっしと外に出て行った。あれが@riafなんじゃなかろうか。

正直、ぼくのCrocos訪問記はここで終わってしまうのだが、これだけだとあんまりなので、二次的情報を元に、ぼくが考える@sotarokのスゴさを語って締めたいと思う。

@sotarokはムーブメントを起こせる人だと思う。

Crocosエンジニアチームの中核となったのが、@sotarok率いるエンジ忍者集団nequalだ。@sotarokは、自身のブログで、nequalの生い立ちを、こう思い返している。

きっかけは、僕が同世代のプログラマーと仲良くしたかったというのがあり、当時、僕もPHPでようやくサイトとか構築できるようになってきたくらいのレベルで (はずかしながら!)、PHPフレームワークのEthnaを勉強しはじめ、PHP勉強会に出はじめ、技術的なブログとかをよく読んだり書いたりするようになった時期だったのだけど、PHP について調べたり Ethna について調べたりするとよく検索にかかるブログがあった。その「WebProgを極めて居酒屋をつくる」というブログをやっていたのが riaf だった。

なんかいろんなコト知ってる人だなーと思っていたらある日「ハタチになりました。ハタチになる前に1個サービスリリースできたぞー」とかいうブログ記事を書いてて、え、この人そんな若いのかよ!と衝撃を受けた記憶がある。当時僕は22歳だったので、なんか色々悔しかったんですよね。基本的に嫉妬をするタイプなので。

で、ちょっとしたきっかけで、Twitter で DM をしたのが最初の出会いだった。

そこから、なんか一緒にやろうよ、という話をして、いいね楽しそうだね、ということになり、2日間くらい色々なんて名前にするかで悩み、大晦日前日の 2007年12月、 nequal.jp というドメインを取得して、nequal を立ち上げた。

こう書かれると、なんかどこにでもありそうな話だが、「こいつすげえなあ」と思ったからといって、TwitterでDMを飛ばし、さらに一緒にチームを組んで何かをやろうと思う人は、絶対的な少数派である。この時点では、脆いちっぽけなムーブメントかもしれないが、このnequalの結成が、雪だるま式に面白いことを生んでいくことになる。

nequalの最初の転機は、けんすうさんに仕掛けたいたずらだったようだ。[2]

nanapiの創業者のけんすうさんが、当時のことを自身のブログでこう書いている。

そして、それから数ヶ月後、sotarokから一通のメールが届いた。その内容は「攻撃したのは僕たちです。ごめんなさい。一度、お詫びしたいので、ご飯でもどうですか。」的なものだった。

自分より年下の20歳そこらのプログラマーで、自分のサイトに攻撃をしてきた人と会えるチャンスなんてなかなかない。当然、快諾をして、汐留の40階あたりの和食屋でランチをしたのがsotarokとの初めての出会いである。

知り合いのエンジニアと協力し、無知なりに頑張っている人のサービスにセキュリティ攻撃をかける。ここまでなら、洋の東西を問わずによく聞く話である。@sotarokがすごいのは、その後に、お詫びというかたちでけんすうさんに連絡を入れ、新しい人間関係を築いたことだ。

会ったこともない人、それも迷惑をかけた人間と会おうというのは、相当な勇気というか、やんちゃさが必要なことだと思う。でも、往々にして新しいこと、面白いことをするには、やんちゃさが必要となるのも事実だ。多分@sotarokは、いい塩梅にやんちゃな人なんだろう。無謀ではなく、やんちゃ。振り返ってみれば、この@sotarokのやんちゃさが、nequalと小沢・岡元コンビを引き合わせ、今回のexitを実現させたのだ。

あと一つ、Crocosが引き起こしたムーブメントがあると思う。プロダクト・エンジニアという立ち位置だ。@sotarokは、Crocosチームをこうべた褒めしている。

僕らはエンジニアだけど、仕様も考えたし、CSもしたし、広報もしたし、インフラもやりつつコードも書いたし、時にはデザインもした。エンジニアはエンジニアで、個性的だったけど、みんな自分のこだわるポイントが違っていたから、補完しあえるチームだった。

ただ単にコードを書くだけではなく、プロダクトの方向性やデザイン、そしてマーケティングも担えるエンジニアというのは、スタートアップではとても重宝する。というのも、必要な役割の方が、雇えるエンジニアの数よりも多い上、いつどこでどういう作業が必要かだなんて皆目見当もつかないからだ。必要な時に必要なこと—バグ修正だったり、顧客対応だったり、デザインだったり、マーケティングだったり—ができないと、あっという間に仕事が回らなくなってしまう。そういうプロダクト一般なんでもできるエンジニア達のことを、ソフトウェアだけでなく、プロダクト全般をエンジニアできる人という意味で、ぼくは勝手にプロダクト・エンジニアと呼んでいる。

Crocosエンジニア達を遠くから見ていて感じるのは、彼らはみんなプロダクト・エンジニアなのだ。石を投げればスタートアップに当たるシリコンバレーならまだしも、東京でそういうチームが揃えられたCrocosは、とても稀有ではなかろうか。ぼくは日本でも、もっとそういうチームが増えていってほしいと思っており、Crocosは、これからの日本のスタートアップにとって、良いロールモデルとなるだろう。


技術面でのリーダーシップというのは、CTOにとって不可欠だ。技術的に尊敬できない人のもとで働きたいエンジニアなど1人もいない。でも、技術面でのリーダーシップだけでは何かが足りない。これはCTOに限ったことではないが、CEOにしてもCOOにしても、いわゆるC−レベルの人というのは、何かムーブメントを起こせる人であるべきだと思うのだ。@sotarokには、その資質が備わっているような気がしなくもない

昔、浜ちゃんがヘタックソながら熱唱していた「時には起こせよムーブメント」という曲があったが、@sotarokには、時にはではなく、毎年ムーブメントを起こしていってもらいたい。

これだけべた褒めしたんだから、焼き肉くらいおごってくれてもいいと思っている。


  1. ちなみに、後にTwitterでの絡みで、@sotarokは、自分など到底足下にもおよばないPerfumeの大ファンであることを知った。
  2. この話を読んで真っ先に思い出したのが、FacebookをハックしたことがきっかけでFacebookに入社したChris Putnamの話だ。彼の話は、Kate Losseの本にも出てくる。

2012-09-15