2015-12-30

2015年に読んだ本

参考:2014年に読んだ本

今年は仕事ばっかりで、全くブログを書かなかった。なんと、リー・クアン・ユー大往生の一本のみという筆不精ぶりである。2016年もあまりブログを書く時間は無さそうであるが、本は読み続けたい。

  1. Practical Data Science with R:実際データサイエンスをどうやるか実践した本。ZumelとMountは夫婦でやってるシリコンバレーでは名の通ったデータサイエンティストである。RとPythonで論争が巻き起こる業界だが、この夫婦はR派。彼らのブログも結構おもしろくて、たまに読んでいる。
  2. The Wall Street Journal Guide to Information Graphics: The Dos and Don'ts of Presenting Data, Facts, and Figures:WSJでデータ可視化をやってる人が書いた、データ可視化の指南書。基本的なことがきちんとまとめられていて、デフォルトがクソなExcelのグラフとかを直すときに役立つ。短くてサッと読めるのもうれしい。
  3. The Software Paradox:Redmonkという、たった3人のアナリストでやってるIT調査会社があるのだが、そこの創業者のSteve O'Gradyが書いた、ソフトウェア小史。エンプラのソフトウェアが昔高く売れた背景、そして今売れなくなってきてる理由など、56ページの中に、様々な示唆が詰まっている良書。
  4. Crossing the Chasm:B2B(ビジネス向けソフトウェア)のマーケティングについて書いた本。仕事を再考する糧にと再読したら、いろいろと目から鱗だった。Geoffrey Mooreは一発屋かもしれないが、すごいホームランを打ってくれたものである。
  5. 数学で考える経済学:数学は知っているけど経済学は知らない(≒筆者)向けに書かれた、経済学の超入門書。いろいろなトピックのさわりが、それなりに数学を使って書いてある。「ふーん」というレベルだったが、生まれて始めて経済学をおもしろいと思えたので、そういう意味では成功かもしれない。Amazonの他のレビューも書いてあるが、数学の素養がないとキビシイ(そしてそのくせアローの不可能性定理の証明の一般形はスキップしてるので、そういう意味では悪書かもしれない)。
  6. Whores for Gloria:ひたすら性転換した娼婦とセックスしてお話を聞いて、Gloriaについて思いにふけるオッサンの話。あまりに支離滅裂かもしれないが、William Vollmannならでは、でもある。実際この本を書くために、サンフランシスコの娼婦たちと「お話」しまくったらしい。
  7. Python for Data Analysis:Pandasの著者によるPandasの解説本である。仕事でPandasを使う人のキモチを理解する必要に迫られたので、通読した。と同時に数年ぶりにPythonを使うようになった。仕事でプログラムを書くというと、データ分析系の作業ばっかりなので、Pythonの方がRubyより便利である。あと、マーケター的には、中身はPandasの解説なんだけど、タイトルには「データ分析のためのPython」という風に、whatではなくてhowを持ってくるMcKinneyのマーケティング力は素晴らしい。
  8. The Sales Acceleration Formula:マーケティングソフトウェアの大手Hubspotで、長年営業のトップをやってきたRobergeが書いた営業組織の作り方の指南書。営業というと、個人能力が評価されがちだが、強い営業組織を作るには、きちんとしたプロセスを作り、科学的に取り組む必要があることがよくわかる。ブラジルよりもドイツというわけだ。RobergeがHubspotの営業組織をゼロから作り上げたという実績も、彼の解説に説得力をもたせている。
  9. The Hard Thing About Hard Things:今となってはA16Zの共同創業者という肩書きの方が有名なBen Horowitzだが、彼は元々Opswareというデータセンター自動化のソフトウェア会社をHPに16億ドルで売却した起業家である。この本はOpsware時代の苦難苦渋の体験を振り返りつつ、生きるヒントを散りばめた本。なかなかすごい本であった。近く再読したい。
  10. Statistics Done Wrong:学部で物理学の実験の素養として統計学を学んだ筆者が、統計学を学ぶうえで犯しがちなミスを懇切丁寧に書いた良書。みんなデータ駆動でPDCA回そうぜとかいう割には、統計学の知識が完全に欠落している人が殆どなので、この手の本は貴重。統計とか門外漢だから…と思っている人にこそ読んでもらいたい本。ちなみに筆者は統計学で博士課程在学中(執筆当時)。
  11. Crazy Rich Asians:シンガポールの大富豪の跡取り息子が、親友の結婚式への参加をきっかけに、中国系アメリカ人の彼女をシンガポールに連れて行き、家族に会わせる話。こう書くとなんだか単純な話に聞こえるが、あらゆる側面でぶっ飛んでいる小説である。作者のKevin Kwan自身、裕福な家庭に生まれたシンガポール系アメリカ人で、一部自伝的な小説らしい。仕事が忙しくて、毎週末ブランチを食べる30分だけ読んでいたので、読み終わるのに何ヶ月もかかってしまった。日本のドラマになり得る、笑いあり、涙ありの痛快なラブコメティ本。
  12. Behind the Cloud:Salesforce.comの創業者、Marc Benioffの起業指南書。AWSを除けば、世界最速で成長したクラウド事業であるSalesforce.comの創業者のことばには重みがある。特にBenioffが偉いと思うのは、築いた資産をきちんと還元していることだ。ぼく自身、最近Benioffがカリフォルニア大学サンフランシスコ校に寄付した小児病院の目の前に住んでいるのだが、病院を見るたびに、「こういうのをノブリース・オブリージュというんだなあ」と感銘をうける。Salesforce.comには1/1/1という社内ルールがあり、売上の1%を寄付、商品の1%を無償提供、そして社員の時間の1%をボランティアに使うというものだ。ちなみに本書は、そのルールにちなんで、111個のアドバイスに分けられて書いてある。個人的には、Benioffはマーケティングの天才だと再認識した。
  13. 完全独習ベイズ統計学入門:経済学者が書いたベイズ統計の入門書。微積分はおろか、ほぼ算数の範囲だけでベイズ統計の概念を説明しようとした入門書。さすがにベータ関数・正規関数の説明のところは無理があったが、全体的にはわかりやすく書かれている。著者である小島寛之教授は、以前塾で数学講師をされていたのだが、著者もその時の生徒の一人である。さして数学のセンスもない著者に、数学の魅力を著書と授業を通じて教え、数学を専攻させるまでにしてしまった人でもある。昔から、むずかしい話をわかりやすく解説するのは得意な先生だったが、その手腕は衰えていない。
  14. Startup Growth Engines:Growth Hackerの名付け親であり、Dropboxの火付け役であるSean Ellis氏と、Growthhackers.comの発起人のMorgan Brown氏が書いた、ベンチャー成長戦略のケーススタディ集。Dropbox・GitHub・Belly・Square・LinkedInといった企業の話が書かれている。内容はまあ当たり前で、ターゲットを決めて、いい製品を作って、とにかく頑張って売るというもの。ただこの3つを同時にできている会社は殆どいないというのが、ベンチャーの悲哀でもある。
  15. Buyer Personas: How to Gain Insight into your Customer's Expectations, Align your Marketing Strategies, and Win More Business:マーケティングをする上で非常に重要な、想定顧客の作り方について書いた本。仕事でうんうん言っている時に偶然出くわして一気に読んだ。製品マーケティングや商品企画をやっている人には是非おすすめしたい本。

読みかけの本がまたまた何冊かあるので、そこら辺を片付けていきたい。あとやっぱり年間20冊は読まなくてはと思う。

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