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キャッチアップ−22

今日はちょっと自分の話を。いつもと違ってquipというかdisりはないので、そういうのを期待している人は読んでもつまらんと思う。

1999年11月1日、ぼくは両親の仕事で渡米した。ESL(English as the Second Language)という、英語を母語としない子が、他の子に追いつけるように特設したクラスでのスタートだった。ぼくは英・仏・日のトライリンガルの母親に育てられたにも関わらず、面白いほど英語ができなかった。でも、「ぼくだけESLで特別扱い」というのがイヤでイヤでたまらず、最初の6ヶ月は死にもの狂いで英語を勉強した。ESLの先生におべっかを使いまくったかいもあって、2000年の5月には、ESLを卒業することになった。夏休みの後からは、ネイティブの子たちと一緒に授業が受けられるとのことで、嬉々としたのを覚えている。とにかく昔から、特別扱いがイヤだったのだ。

ESLを無事抜けたはいいが、夏休みの課題も、ネイティブの子たちと一緒にやることになった。Joseph HellerのCatch-22を読んで書評を書くというもので、ESLを卒業して勢いに乗っていたぼくは、勇み足で母親と本を買いに行き、帰宅するなり読みはじめた。

が...なんと最初の1ページから意味がまったくわからない。辞書で意味を調べるが、基本的にほとんどの単語の意味がわからないので、まったくイメージが湧かない。朝から晩まで読んでも5ページも進まない日もあったが、3ヶ月近くある夏休みを全投入してなんとか本を終わらせ、書評を書いた。何を書いたかなど、これっぽちも覚えていない。

3ヶ月ほど前、本屋をぶらぶらしていたら、Catch-22が目に留まった。今年で出版50周年記念だそうで、書店の人のレビューと一緒に置いてあった[1]。ブルーのカバーに白抜きで"Catch-22"というタイトル、そして傾いた赤い男性のシルエット。昔と少し装丁は違うみたいだが、懐かしくなったので買うことにした。

早速、帰宅するなり再読しはじめた。仕事の合間に少しずつ読み、先週末やっと読み終えたのだが、いくつか気がついたことがある。

  1. 未だに知らない単語が出てくるので、やっぱり難しい本なんだということ。iPhoneの辞書を片手に読んだ[2]のだが、少なくとも100は意味がわからない単語があったと思う。文章もひねってあるものが多かった。まだまだ英語は学ぶことがあるなあと思い知らされた。次に再読するときは辞書なしでいきたいものだ。
  2. 10年前、ぼくはこの本の内容を全く理解していなかったということ。キャッチ−22ならぬキャッチアップ−26[3]である。第二次世界大戦中、イタリア戦線で戦う米兵たちの狂気と戦争の不条理を描いた本なのだが、大体10年前は、イタリアでの話だということも理解していなかったし、女好きで機転が利くという主人公のキャラクター設定なども全く把握していなかった。今となってはどうやって書評を書いたのか不思議でたまらない。添削した先生も「こいつ何にもわかってねえなあ」と思ったことだろう。

そして再認識したのが

今まで読んできた英語の本は、内容を勘違いしているものが少なからずある

ということ。英語が母語ではないので、仕方がないと言えばそれまでだが、少し恥ずかしい気持ちになった。機会を見つけて他の本も再読したいものだ。

この本は、タイトルの"Catch-22"が「理不尽でにっちもさっちもいかない状況」という意味に使われるまでになったポピュラーな本である。じっくり読まないと一瞬で意味がわからなくなるが、これほど大組織の不条理を浮き彫りにした本はなかなかない。英語に自信のある人や、一気に語彙を増やしたい人は原著を読むことをオススメする。そんな時間はないという人には和訳も出ているので、是非まとまった時間を見つけて読んでほしい。


  1. ぼくが未だに本屋さんに行く理由の一つが、書店の人が書く手書きのレビューである。電子書籍の台頭で、経営は厳しいのかもしれないが、まちの本屋さんにはがんばってほしいと常日頃思っている。
  2. 10年前に読んだ時はOxfordの紙の辞書だった。楽になったものである。
  3. 今年、筆者は26歳。

2011-11-01