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中華料理屋テスト

ウォンテッドリーという会社がある。「仕事でココロオドル人を増やす」という信念のもと、サラリーマンの99%が死んだ魚のような目をして帰路につく(ようにみえる)日本社会に、雇用というアングルから新しい風を吹き込んでいる会社だ(どうやら近日中に新しい名刺サービスを出すらしい)。

以下、そのウォンテッドリーに総合商社から最近転職したひとの文章から

深夜のオフィスにはCEOの仲さん、エンジニアの相川くん、りかちゃんがいました。

3人のいきいきとしている姿、ズバズバ発言する姿に、直感的に「なにこれ、面白い!!この人達、超面白い!」と思いました。深夜のハイテンションで勘違いしているのではと自分でも思いましたが(笑)、翌日目が覚めた後もまだ興奮していて、

「これくらい心がワクワクする仲間と、私は働きたいんだ!」

と実感しました。

そう、私の軸は、「何をするか」でなく、「誰とするか」だったのです。

さっき99%のサラリーマンの目が死んでいると書いたが、もちろんあれは誇張で、10人に1人くらいは活き活きしている大人もいる。そういう目が死んでいない大人と話をすると、大概彼らは仕事に生き甲斐を感じていて、その理由は大きくわけて、

  1. 仕事そのものを楽しんでいるか
  2. 一緒に仕事をしている仲間を尊敬し、愛してやまないか

のどちらかだ。引用したひとは、2番目と言っていいだろう。

もちろん「何をするか」と「誰とするか」というのは二律背反のものではないし、ましてやどちらがいいという話でもない。ただ、ぼくは「誰とするか」を大事にした方が、外的リスクは低いと感じている。これは小さい会社においても、大企業においても言えると思う。

理由は単純で、多くの人にとって、仕事の内容というのは本人の意思と関係なく変わり続けるものだからだ。

小さい会社、特にスタートアップの場合、仕事の内容はおろか、ビジネスやサービスそのものが180度方向転換することもよくある。ピボットというやつだ。その一方で、大企業でも、お偉いさんの鶴の一声でプロジェクトが中止になったとか、社内政治の影響で急に配属が変わったなんて話もよく聞く。仮にそういった外的要因で仕事の内容が変わることがなくても、スタートアップが順当に成長したり、社内で評価が上がっていけば、責任範囲が広がったり、管理職につくことになり、仕事の内容そのものは必然的に変わる。

いつまでも同じ仕事をするというのは難しい。[1]実際、自分の周りで「何をするか」を「誰とするか」よりも優先している人は、頻繁に転職している。

その点、「誰とするか」を優先するとどうなるか。チームが一緒にいる限り、「ココロオドル」仕事をし続けることができる。立場が変わったり、仕事内容が変わったり、はたまた会社のビジネスそのものがガラッと衣替えするかもしれない。それでも、もしチームメートが大大大好きで、彼らを尊敬し、信頼しているならば、やる気を維持して働き続けることができる。

もちろん、チームがバラバラになってしまうリスクはある。ただ、そのリスクは、仕事の内容の変遷に比べれば、きわめて内在的なものだ。いつまでも「この人と一緒にしたい」と思い続けるためには、お互いを尊重し、信頼関係を築いていく必要はあるが、逆にそれさえできていれば、市場の荒波や理不尽な経営層に負けることなく、長いスパンで一緒によい仕事ができる。

ぼくは、自分が今どちらの状況にあるかというのを判断するのに、「中華料理屋テスト」というものを使っている。「もし明日チームリーダー/社長が『今日からうちは中華料理屋になります』と言ったら、それでも今の会社で働き続けるか」というものだ。[2]もし続ける意欲が削がれるなら、その職場は自分にとって「何をするか」の方が「誰とするか」よりも大事で、もし「どうやって明日から中華料理屋をやろうかな」と考え始めるなら、その逆ということだ。

この「中華料理屋テスト」は、自分のやる気のリトマス紙となる。もし「何をするか」が大事なら、今の仕事を継続できるように動くべきだし、「誰とするか」が大事なら、今の仲間が離ればなれにならないように考慮することが、「ココロオドル」仕事を続けられるカギだと思う。

...とまあ書いたところで、死んだ目のサラリーマンの方々は仮死状態にあり、その停まった心に命を吹き込むところから始めなくていけないわけで、ウォンテッドリーさんには、そこんところをぜひ期待したいところだ。


  1. 以前はアカデミア・研究者は例外かと思っていたが、大学に残っている知り合いたちを見ていると、どうもそうではないらしい。
  2. 別に中華料理屋に深い意味はない。「他の人に『一緒にやろう!』と言われなければ絶対にやろうと思わないビジネス」の代名詞として選んだまでだ。もし今中華料理屋で働いている人や、これから中華料理屋をやろうと思っている人には当てはまらないことは、重々承知だ。

2013-07-01