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「外国人社長」

巷を賑わせているオリンパス・ショックだが、事件そのものはいかんせん不透明なので、ちゃかすことくらいしかできないが、それよりも気になったことがある。「外国人社長」という表現だ。例えば、朝日新聞のこの記事は、見出しが「オリンパスが外国人社長解任 前社長が復帰」となっている。まあこの前社長もすぐさま交代したのだが、「外国人社長」という表現が、少しひっかかる。

まず具体性の欠如だ。マイケル・ウッドフォード氏は英国人だ。当然、朝日新聞の記者はそんなことは知っている。だったら「英国人社長」と書けばいい。「英国人」と書けば、誰だって外国人だとわかる。しかし天下の朝日新聞の記者およびデスクだ[1]、あえて「外国人」という表現をしたに違いない。とにかく、議論の都合上、意図的なものだと仮定する。

「外国人」は「日本人」と対をなす言葉だ。おそらく記事のタイトルを決めるにあたり、ウッドフォード氏が日本人ではないことを強調したかったのではなかろうか。日本のしきたりや慣例がわからない外国人が社長の座を降り、生え抜きの日本人の重役が返り咲くというわけだ。

もう一つの可能性として、「英国人」と書くより「外国人」と書いた方がアンチ外人な感じがして、読者のウケがよさそうだとデスクと記者が話し合って決めたということも考えられる。本当にこんなことを考えていたら呆れてしまうが、あり得ないこともない。「◯◯さん、『外国人社長』ってなんか煽っている感じですよねー」「ああ、そうだなあ」これが本当だったら、読者をナメているとしか言いようがない。

お前、深読みしすぎだという声が聞こえてくる。ごもっともな意見だ。しかし、このグローバルな時代に「外国人社長」という見出しを書く新聞も、いささか配慮が欠けている。

物心ついた時から読んできた朝日新聞は、日本語の教科書だった。例えば、論説委員として13年に渡り天声人語を執筆した辰濃和男さんの「文章の書き方」は、小学生の時に読み、深く感銘をうけた[2]。辰濃さんのような優れたジャーナリストを輩出した新聞社だ。もう少し思慮深くてもいいのではなかろうか。


  1. 皮肉。
  2. ウン十年も前のことだし、ガキだったのでおそらく全部理解できてなかったに違いない。機会を見つけ、再読したい。今となっては、「なにより事実関係をきちんと把握するべき」と「漢字は文章全体の4割ほどにすること」というルールしか覚えていない。

2011-10-28