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現金プリーズ

元Facebookで拡大戦略を担当していたChamath PalihapitiyaがAirBnBに苦言を呈したEメールが、公表されたことで話題になっている。AirBnBというのは、個人が自分のアパートや家、施設などを手軽に貸し出せるようにするサービスで、小国のリヒテンシュタインが、国全部を一晩70000ドルで貸し出したりしており、今話題のサービスだ。時価は10億ドルとも言われており、つい最近、1億1200万ドルの資金調達をしたばかりだ。この資金調達が、Palihapitiya氏の反感を買うことになったのだが、ぼくが説明するよりも、本人が書いたEメールの方がはるかにわかりやすいので、ここに翻訳した。Brianというのは、AirBnBの共同創始者のBrian Cheskyのことで、Marcは、著名なVenture CapitalistであるMarc Andreessen、Reidは、LinkedInで知られるReid Hoffmanのことと思われる。

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CC:Marc、Reid、そして僕のチーム

まず、今回の資金調達に、ぼくを参加させてくれたことを感謝する。昨日、腰を落ち着けて書類を読んだ結果、率直に言おう。ぼくは60回近い投資をしてきたが、こんな取引ははじめてだ。マジで心配である。

株式の希薄化(dilution)を避け、会社のコントロールを保ちたいというのはよくわかる。Facebookは、巧妙にこれを成し遂げ、最初のPeter Thielからもらった50万ドルを除けば、必要に迫られての資金調達というのはしたことがない。結果的に投資家が大きな権限を持つことはなく、良い結果につながったと思っている。以前に話したように、「投資家は会社の成功に大して寄与しない」とぼくは考えていて、将来性のある会社では、彼らの権限を最小限に抑えることは正しい判断だと思う。

確かに今回の取引は、上手に投資家の権限を最小限に抑えていると言える。しかしだ。一つだけどうしても呑み込めないポイントがあって、結果的に君たちに投資することを控えさせてもらいたい。君たちが3100万ドルを会社から現金でもらうと聞いた時、てっきり二次売買で、自分たちの株式を売ったのかと思ったのだ。

でも、よくよく取引の詳細を読むと、君たちが二次売買で得ているのは、3100万ドルのうち、960万ドルだけで、残りの2250万ドルは株式に対する配当としてファウンダーと早期の投資家に回ることになっている(2100万ドルは君たちファウンダーに行くみたいだ)。これは正直オカシイし、長期的な良いビジネスを創ろうという精神に反している。とどのつまりこれは、希薄化を避けながら現金を手に入れるための手段だ。90%近くの株式が既にvestされていて、会社の時価総額が12億ドルの今、何でこんなことをするのか理解に苦しむ。それに、とても早い段階から君と君の共同創始者のために一生懸命働いてきた従業員は、株式ではなく、行使されてないストックオプションを持っているだけだろうから、当然配当金は貰えないことになる。

カネ絡みの問題に対するぼくの基本的な哲学は、「現金が欲しいならそれでよい。でも自分たちが現金をもらうんだったら、従業員も含めみんなに現金を渡そう」だ。みんなにお金が渡らないんだったら、誰一人として現金を手にしてはいけない。今回の君たちの取引は、ぼくが見てきた取引の中で、ぼくの哲学から一番ほど遠いものだ。実は、この「作戦」は過去に一回行われている。そう、Grouponだ。Grouponがいかに成功していて[1]、投資家たちがGrouponの超短期的な目算を、どれだけ冷やかに見ているか思い出してほしい。君たちにはGrouponのようになってほしくないし、Grouponよりも遥かに上質だと信じている。

少し別の観点から言えば、過去の成功したテック企業を見ると、配当というのは、現金が豊富にある会社が、余剰の売り上げを株主に渡す手段でしかない。実を言えば、75億ドルという巨額の現金を持っているAppleですら株式の配当金は出していないのだ。AirBnBは優良企業になると思うが、今はまだそうではない。君たちはまだ事業拡大に邁進するべきだ。

君たちはスゴいものを創ろうとしている。だからこそ、近道をとらないでほしい。自分たちと同じように社員たちに接してほしい。取締役会も、現社員も、そして面接に来る将来の社員も納得できるやり方で会社を運営してほしい。今、シリコンバレーでは、良質な社員を手に入れるため熾烈な採用戦争が繰り広げられている。「社員をファウンダーと同じ仲間として公平に扱う」という理念は、社員を幸せにし、離職を減らし、ライバル会社に差をつけることができる強力な武器だ。逆に、自己中心的でキタナいと周囲に思われてしまったら、未来は明るくない。

かいつまんで言えば、今回の資金調達はキタナい臭いがするからパスさせてもらう。誰がこんなナンセンスなやり方を提案したのかしらないが、昨晩Reid[2]にこの話をしたら、彼もぼくと似たような意見で、こんなことが水面下で進んでいたことにビックリしていた。もしぼくの助言を聞く気があるならば、Reidに連絡をとり、違ったかたちで株式の現金化を模索することを勧める。

もし君たちが資金調達の方法を変えるというなら、ぼくは喜んで再考したい。そうでないなら、幸運を祈る。

それでは。

Chamath

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お金というのは怖いもので、金銭トラブルが原因で、何十年もの友情にヒビが入るなんてのは、珍しいことではない。言ってみれば、お金というのは信用のシンボルだ。だからこそ、お金に関する情報というのは組織の中でなるべく透明にするべきだ。

VCが起業家を公に批判したことに関しては、非難の声も多数上がっている。でも、テックバブルのまっただ中で、それこそGrouponのような半ばインチキな会社に何百億というお金が流れている今、あえて憎まれ役を買ってでたPalihapitiya氏にエールを送りたいと思う。彼だって、目をつぶって投資していれば、それはそれでいくらかの金になっただろうが、シリコンバレーの先輩として、後輩たちに道を示したかったのだろう。

でもPalihapitiya氏、Facebookで4年間もお偉いさんやってたから、それこそ2000万ドルではすまない大金を手にしているんだろう。金持ちの余裕というやつかもしれない。


  1. 皮肉です。Grouponは上場を決めたのはいいですが、次から次から会計がらみのボロが出てきて、上場そのものも怪しいのが現状。早い段階から資金調達をする度に、ファウンダーたちを含めた早期の投資家たちに金をばらまいてきたので、ねずみ講だと揶揄されています。
  2. 正確にはGreylock Partnersを代表してReid Hoffmanが投資している。

2011-10-02