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ホ・ホ・ホ・ホカロン

先月14年ぶりに知り合いと再会した。小学校時代の塾の同級生であり、クロスフィールズの創業者である松島由佳さんだ。

日が沈むか沈まないかという金曜日の夕方、渋谷にある洒落たカフェで、チーズの盛り合わせと、ヒジキの入った小ちゃな和風ピザを頼み、ふかふかすぎて尻が埋もれてしまう座り心地がいいんだか悪いんだかわからない滑らかな革のソファに座り、すんごい久しぶりに話をした。

数年会ってない友人と会えば積もる話というのもあるのかもしれない。しかし27年近くしか生きていない人間にとって、14年間というのは、意識のある時間の大半であり、そこが吹っ飛んでいるんだから、初対面同然だ。昔3年間一緒の塾に行っていたという、刷り込まれたとしても不思議ではないくらいの不確かな事実があるだけで、他人といってもいい。

というわけで、ぼくについて何を覚えているか聞いてみた。

松島さんは、「えー意外と結構覚えているよー」と切り出したので、期待したのだが、その後に出てきた言葉を聞いて笑ってしまった。

「うーん...とてもよく喋ってたよね。うるさかったw」

やはりおしゃべりなのは昔からのようだ。

「てか松島さんも含め女子が静かすぎたんじゃ」

「静かだよーだって勉強しに行ってたんだもん」

(そうか...塾は勉強するところだったのか)

うるさいヤツという記憶だけではないはずだという焦りもあり、ぼくはしつこく食い下がった。

「他にも覚えていることってないの」

「うーん。ああ、そういえば。」

おっときた。そうだ、松島よ。何かポジティブなことを思い出すのだ。

「〇〇君(ぼく)のお母さんの話なんだけど。1月校の会場の入り口に立ってて、私に声をかけてきて。『松島さんどう』って聞かれたから『ちょっと寒いです』と言ったら『あなた背中出しなさい』って言って、その場でセーターをばっとめくって背中にホカロンをぱっと貼り付けて...『これであったかいわよ!』って。今でも印象に残っている」

...てかぼくの話ではないではないか。しかもこれは...ポジティブな話なんだろうか。うちの母親らしいと言えばそうなのだが、少し恥ずかしいような気もした。

その後は、クロスフィールズを立ち上げたいきさつや、実は結構いる共通の友人のこと、日本の外に出ることの意味などについて話し、チーズもピザも平らげ、小一時間してカフェを出た。日は落ちているとはいえ、北カリフォルニアのカラッとした天気に慣れたアメ公には、5月の東京は蒸し暑い。

その晩、久しぶりに会った母親に、松島さんのホカロンストーリーを伝えたところ、「そんなことしたかな」と、あまり覚えていないようだった。

「したんだよ。母さんだったらしそう」

「人間したことは忘れるけど、されたことは忘れんのだ。よくも悪くも。」

だから人には真摯的に接するべきだ...と言い切ってしまわない。実はこれがミソなのかもしれないと思いながら、それを敢えて聞くのも無粋だと思い、ぼくは寝ることにした。

2012-06-15