2012-10-18

どんな日本語もビジネス英語に翻訳できるようになる7つのステップ

先日、(英語の)文章をDFW化する方法という記事を読んで、抱腹絶倒したので1似たようなことをやりたくなった。

題して「どんな日本語もビジネス英語に翻訳できるようになる7つのステップ」だ。完全に釣りなので、釣られたくなければここで去るんだ!

セオリーだけでは具体性に欠くので、例文を用意する。「蒼井優は僕のことが好きです」でいくことにしよう。

ステップ1:とりあえず訳す

どっかの時点で英語にしなくてはいけないので、早速翻訳してしまおう。繰り返すが、例文は

蒼井優は僕のことが好きです。

Yu Aoi loves me.

まあここは比較的簡単だ。3人称単数現在なのがポイント。

ステップ2:主語と目的語を修飾する

まあこれはビジネス英語に限ったことではないが、主語と目的語がペロっとあっても寂しいというか、なんかそれっぽくないので、ちょっと修飾することにする。修飾には",...,"という節を加える方向で行こう。

まず主語:

Yu Aoi, a critically acclaimed actress, loves me.

"critically acclaimed"というのは、「(玄人のまわりで)高く評価されている」みたいな意味で、意訳するなら「演技派」なのだろうか。わからないけど。蒼井優はまあ顔もカワイイけどな。

次は目的語:

Yu Aoi, a critically acclaimed actress, loves the person who looks like me.

もうこの時点で"the person who looks like me"は「ぼくに似た人間」なので、ぼくでない可能性さえ出てきているのだが、気にしない。ただ"who looks like me"だとビジネス英語としては、くだけすぎているので、ちょっと改造しよう。

Yu Aoi, a critically acclaimed actress, loves the person whose biographical information bears a resemblance to mine.

「蒼井優はぼくの経歴に似たある人が好き」だそうだ。ほんとかよ。ちなみに"bear a resemblance to"は、インテリっぽく聞こえる表現なのでビジネス英語にはおすすめである(ほんとかよ)。

ステップ3:動詞を複雑に言い換える

意味が簡明になってしまったらビジネス英語は大問題なので、動詞を複雑にしてみよう。

Yu Aoi, a critically acclaimed actress, prefers the person whose biographical information bears a resemblance to mine to other alternatives.

どうやら蒼井優はぼくのことを絶対的な評価基準で好きだったわけではなく、他のチョイス(例えばO森N朋)と比べて好きだったようだ。いや、正確には「ぼくの経歴に似た、とある人間」か。ちなみに、"prefer X to Y"というのは「YよりXを好む」という慣用的フレーズだ。今回の場合、Yは"other alternatives"なんだが、"alternatives"自体、「代替」という意味なので、すでに"other"であることが示唆されており、"other alternatives"は「馬から落ちて落馬して」である。ビジネス英語ならではの、無意味な文章の冗長化だ。

ステップ4:リサーチに基づく結果であることをアピール

ビジネスといえば、異臭から始めて、ファックトベースにSWOTおっとっと分析をするのが基本である。なかでもファックトなくして建設的な議論はできない!これはビジネス英語も一緒だ。ということで、奥義「リサーチによれば」である。リサーチの結果ですファックト揃ってますと前置きすることで、俄然信用性が高まるのだ。

Research shows that Yu Aoi, a critically acclaimed actress, prefers the person whose biographical information bears a resemblance to mine to other alternatives.

"Research shows that..."というのはビジネス英語でよく見かける表現だが、リサーチによるものかは、その後の説明を読めばわかるものだから、この3語は完全にスペースの無駄だ。でも"research shows that"をググると4400万件もヒットする。少なくとも3×4400万=1億3200万もの単語がディスクスペースを無駄にしているわけだから恐ろしい。

この"research shows that"という表現、筆者もビジネス英語を書く時は愛用していることは、言わずもがなである。

ステップ5:客観的・戦略的な理由であることを印象づける

Research shows that Yu Aoi, a critically acclaimed actress, believes that for strategic reasons, it is beneficial for her client that she prefers the person whose biographical information bears a resemblance to mine to other alternatives.

...だそうだ。蒼井優が、ぼくの経歴に似た人を、他の輩よりも好むことによって、彼女のクライアントは得をするそうだ。いよいよ何がなんだかわかんなくなってきた。そもそも蒼井優のクライアントって誰だよ。

ステップ6:副詞・形容詞をふんだんに足す

本当は、無駄に副詞だと形容詞を足さず、的確な動詞と名詞を使った文章の方が、シンプルかつメリハリがある(Cormac McCarthyが良い例である)のだが、そんな心配はビジネス英語には不要である。とにかく副詞・形容詞で膨らませよう。

Research shows that Yu Aoi, a critically acclaimed actress, firmly believes that for myriad strategic reasons, it is unequivocally beneficial for her invaluable client that she prefers the person whose biographical information bears a striking resemblance to mine to other alternatives.

おお!蒼井優が好む、ぼくの経歴に似た人は、単に似ているだけではなく酷似しているらしい。そして蒼井優のクライントはinvaluableだそうだ。本当かよ。

ステップ7:妄想に任せてもっともらしいことを足す(おまけ)

さあ、何が足されたかおわかりだろうか。あえて色づけはやめてみた。

Research shows that Yu Aoi, a critically acclaimed actress whose cherubic appearance belies her uncanny ability to morph into any character, firmly believes that for myriad strategic reasons, it is unequivocally beneficial for her invaluable client —our confidante who had been on a covert mission to uncover this person's identity for the last two decades tells us he is a member of a notorious, clandestine syndicate responsible for the demise of another equally clandestine syndicate— that she prefers the person whose biographical information bears a striking resemblance to mine 2 to other alternatives.

ステップ0:ココ重要!

散々デタラメを書いたところで、いよいよ本題である。本当によいビジネス英語が書きたい方、まだいらっしゃいますか!そんなあなたにオススメの一冊が、37signalsの創立者Jason Fried薦める"Revising Prose"である。

効果的な推敲の仕方を説いた名著であり、推敲を重ねることで、文章がより明確で、みずみずしいものになっていくプロセスを、200ページ足らずで実践している。仕事で書くビジネス英語の文章構成力を磨きたいという方々向けの良書だ。そう、上のステップ7のような駄文を書かないためにも。



  1. 嘘である。誇張癖が...

  2. Or does it? I somehow doubt this. I trust her taste is way better than that.

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